富山の自然とアートを体感!温泉で心と体を癒す旅
多くの恵みを受ける地。水、土、海の幸、山の幸、そして先人たちの優れた技術や知恵。富山には、感性を刺激するアートとの出会いがたくさん潜んでいる。作家、職人、料理人に選ばれし場所とも言えよう。価値の高いものが生み出され、雄大な自然と融合して私たちを迎え入れてくれる。人間はなぜ旅を求めるのか。そんな問いにそっと答える。そう、心の潤いこそ、最高のリトリート。
アートに泊まる……時の流れが静かに宿る非日常
神通峡のほとり。中に入ると思わず圧倒される。広い天井に、パノラマで広がる神通川。その建築自体がアートであり、自然と融合する。驚くのは館内の全てがギャラリーとなっていること。ロビー、客室、歩廊、いたるところに絵画、伝統工芸、民芸品、オブジェが置かれているその空間には、時の流れが静かに宿り、ひとつひとつの作品が重厚な存在感を放つ。世界的に有名な作家のものから、現代アートの作品までが息づき、そこに「泊まれる」。日常の喧騒から遠く離れ、内なる自分と向き合う。それが心のリトリート。
サウナ、冷水炭酸泉、ジャグジー、内風呂、露天風呂を完備。サウナには薬草の香りが充満する。
相反する趣の2つの茶席にて。
客室の中庭。陶芸家・内田鋼一氏の作品。
リバーリトリート雅樂倶(がらく)
海・山・空を望む“令和の銭湯” 今も昔も幸せの場所
自然とリトリートできる銭湯がある。魚津市に位置する「スパ・バルナージュ」は地上約40mの高さにあり、立山連峰、富山湾を望む。山と海を独り占めできる場所。雄大なパノラマを眼下に、「絶景サウナ」「瞑想サウナ」で熱された体を澄んだ空気に解き放つ。歴史あるホテルの最上階だが、その昔ここはチャペルだったという。チャペルを彷彿とさせる三角の天井に描かれた”令和の銭湯”アートを見上げれば、心なしか幸福感が増す。
舘鼻則孝氏による立山連峰や稲妻をモチーフとしたタイル画。アート浴を楽しめる。
スパ・バルナージュ
富山県魚津市吉島 1-1-20 グランミラージュ9F
日帰り(予約不要) 10:00~20:00
ホテル宿泊者 6:00~9:30 15:00〜23:00
笹野美紀
サウナトータルプロデューサー。ONEBLOW代表。実家は“サウナの聖地”と称される「サウナしきじ」。現在は、「総合ウェルネス温浴」としてホテル・旅館・診療所などで五感を感じられるサウナのプロデュースをおこなっている。
人と自然がともにつくり合う……「土徳」
「散居村」に住まう…先人の住居体験ができるアートホテル
「散居村(さんきょそん)」という言葉を知っているだろうか?
散居村とは、広大な水田の中に民家がポツポツと点在する集落のこと。この地の風土と農耕のために生まれた景観だが、季節ごとにそれは美しい風景を見ることができる。田に水が張る時季は水に浮かぶ島々のように、そして稲穂の時季もまた美しい。日本の散居村で砺波(となみ)平野は最大規模といわれる。ここ楽土庵は、散居村に佇む3部屋限りの庵。この地には「土徳」という、人と自然がともに作り合う品格を表す言葉が伝わるが、農村景観、伝統建築、工芸、精神風土……全てに表れる土徳をじかに体感できる。
ここの住居の特徴は伝統建築家屋「アズマダチ」といって、東向きの建築。家屋を守るため南西を屋敷林「カイニョ」で覆う。カイニョは風や雪から守る大木、食用木、薬用植物、建材や家具材になる木など、暮らしと一体となった生態系の循環をつくりだしてきた。
濱田庄司氏による作品。楽土庵では、館内に飾られる作品、家具、骨董品は購入することもできる。
富山で制作をする陶芸家・森つくし氏の作品。
楽土庵
撮影 yOU(河﨑夕子)、加藤光
文・編集 中野桜子