古民家の宿に泊まり気の向くまま、山に川に町に遊ぶ〜〝未来〟を紡ぐ徳島5
「神山の人たちに、自然とともに生きる知恵や技術を教えてもらっていると、山と川と海はつながっていると実感します。何世代もあとのことを考えるときも。こういった日々の豊かさを伝えていきたいんです」と話すのは、1組限定の宿「オニヴァ」を営む齊藤郁子さん。
かつてはフランスや東京で働き、世界を旅して多様な暮らしを体感してきたなかで、持続可能な暮らしに惹かれていったといいます。あるとき友人が住む神山町を訪れ、生き生きとした住民の姿と移住者にも寛容な空気に魅せられて移住を決意。土地と家、山を併せて購入し、ここに新たな拠点を構えたのだそうです。
自然の中のサウナや朝食。滞在中の楽しみは無限
オニヴァの正式名称には「エクスペリエンス(体験)」という言葉が入っています。しかしカヤック体験や木工体験といったアクティビティがあらかじめ用意されているわけではありません。まず体験できるのは、のどかな山村の暮らし。そして「パンが焼きたい」「川遊びがしたい」など希望を伝えると、齊藤さんがコーディネートしてくれて、ここでの体験が大きく膨らんでいくという具合なのです。
実際に、齊藤さんが宿泊客と一緒に過ごすことも多く、長期滞在やリピーターが多いとか。 客室は3部屋あり、最大で10人まで宿泊可能ですが、1人で利用しても予約できるのは1日1組のみ。滞在時の楽しみ方は人それぞれ。
深い谷間に建つ森のサウナも人気で、オニヴァの私有地にあるので、なにも身につけずに自然の中で楽しむ人もいるとか。また、朝食には農園内を元気に走り回るニワトリたちが産んだ卵が提供され、宿のリビングダイニングで、フレンチのディナーを味わうことも可能。
神山町を深く知り、強く愛し、過去から現在、そして未来につながる暮らしを実践する齊藤さんに会いに行ってみては。
江戸時代末期に建てられた造り酒屋の建物を改装。
正面玄関を入ってすぐのリビングルームには、ゆったりとしたソファのほか、ダイニングセットやカウンターも。宿泊客は思い思いの場所で本を読んだり音楽を聴いたりして過ごせます。
宿泊時に予約すれば、車で 10 分ほどの森にあるログハウスで朝ご飯をいただくことも可能。木材が朽ちたあとにはボルトだけが残る切り株基礎なので、環境負荷が少ない建物なのだそう。
農園内を元気に走り回るニワトリたちが産んだ卵は朝ご飯に。
B&B On y va & Experience
撮影:鈴木大樹
取材&文:吉田けい
編集:小嶋美樹