知床の命の循環をどう守るか クマと人が互いに共存する地元の取り組みに迫る
手付かずの原生林が物語る、野生動物たちの爪あと
手付かずの原生林が点在する知床。季節ごと、そして一瞬一瞬で違う顔を見せる。五感を研ぎ澄ませて森を歩くと、野生動物や植物たちの神秘と出会える。人工のテーマパークでは決して味わえないダイナミックな体験だ。原生林、断崖絶壁から望む知床半島、知床五湖、滝……。そこにある海、大地、空間、生きとし生ける動植物、すべてが揃ってこそ世界自然遺産なのである。


知床の自然に魅せられ、人々をガイドする谷口祐二さんは世界を旅した末、移住。「自然を見つめ生きていきたいと思ったときにヒグマがいる生態系というのはすごく貴重でした。海から山へと命がつながる……その“循環”する大自然の偉大さを間近で見られる」。楽しさも残酷さも、すべてがありのままの「自然」であると森が教えてくれる。
カムイワッカ湯の滝
ALKU(アルク)知床ガイドツアー




神秘的な名所「カムイワッカ湯の滝」。アイヌ語で「神の水」という意味で、滝は強い温泉成分の湯。かつて、噴火によって沢は硫黄で埋め尽くされ、その後、採掘が行われた歴史もある。現在は滝登りができる。

ヒグマの命も人の命も保たれるよう、長い目で守る努力をしたい

知床はヒグマの高密度生息地だが、近年は市街地への出没が深刻化している。斜里町では2020年から「クマ活」が行われ、クマと人が互いのテリトリーを侵さず共存できる環境づくりを目指す。クマが人を襲えば、互いの命が奪われかねない。

クマが心地よく生活してこそ、知床の豊かな自然は守られる。自然を侵さないのは大前提だが、人の活動で壊された部分を修復する最低限の手立ては必要だと、クマ活の第一人者・村上晴花さんは語る。
「移住して実感したのは、野生動物のすごさ。弱肉強食やピラミッド型の世界ではなく、すべてが循環しているんです。ここで暮らすうちに、自分も自然の恩恵を受けている一人だと感じた。この未来に残すべき宝物を、長い目で守る努力をしたい。それが私の“知床への恩返し”だと思っています」

道路に迷い込み、車から逃げるかのように走り去ろうとするヒグマ。遭遇した地元民による撮影。



「クマ活」は斜里町で65年の歴史を持つ「北こぶしリゾート」が行っている活動。村上さんはホテルの経営戦略室で広報等を務めながら発起人としてクマ活に従事している。運営する「北こぶし知床 ホテル&リゾート」はその立地やサービスから、知床の魅力を大いに味わえるホテル。自然遺産を見渡すことのできる大浴場とサウナはリニューアルしてからというもの、全国の人を呼び寄せる。




ウトロ温泉は肌をツルツルにしてくれ、こだわりのサウナは「サウナシュラン」に何度も選出される注目の施設。フィンランド式にこだわり、オートロウリュですばらしい湿度と温度に設計されている。露天風呂やサウナ付き客室もあり。レストランは知床の地物を味わえる料理がずらり。館内はオールインクルーシブで、至福の時を過ごせる。

北こぶし知床 ホテル&リゾート
撮影 原ヒデトシ
取材・文・編集 中野桜子
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