地獄蒸しや薬膳スープにアート…別府の温泉は通いたくなる魅力が満載
【温泉×アート】別府に溶け込む新たなランドマーク

開放感ある吹き抜けのロビー。別府の風景を表現したアートが出迎えてくれる。左官仕上げの壁面や、九州産針葉樹型枠で打放しにされ木の質感が残る天井も美しい。レセプションには温泉水で変色した真鍮板(しんちゅうばん)を使用。
日本が誇る歴史ある温泉地・別府。湯けむりが立ちのぼるノスタルジックな町並みに突如現れる、異彩を放つ建物がある。扉を開けると、そこはまるで教会か美術館のような空間。しかし、壁や床に目を向けると、地元の土や石が使われ、異質なようで、温もりを感じさせる。

オーナーの林太一郎さんに尋ねると「今、ここで生み出すからには別府のよさである“温泉”に新たな価値を加えたかった」と語る。その答えが、温泉×アートの融合。それは見た目の豪華さではなく、日本の職人技が随所にちりばめられた本物の空間。温泉がもたらす癒やしと、アートが生む感動。その両方が響き合い、心と体を満たしてくれる場所がここガレリアだ。




ガレリア
心の湯治ができる場所
「鉄輪(かんなわ)銀座通り」の石畳を歩き、「柳屋」ののれんをくぐる。掛け流しの名湯に浸かり、サウナで蒸され、明治の趣が残る談話室や囲炉裏の間でくつろぐ。ワーキングスペースで仕事に打ち込む人もいれば、地獄蒸しを楽しむ人も。それぞれが思い思いに過ごし、通えば通うほど心地よさが増していく空間。
温泉の効能のすばらしさはもちろん実感しているが、ここは私にとって“心の湯治”ができる場所。湯の香りに癒やされ、肌にまとわりつく温もりに安らぐ時間。敷地内にある源泉から、もくもくと立ちのぼる湯けむりに包まれながら、鉄輪の「蒸される文化」の奥深さと、その色気に浸る。

温泉の蒸気を使ったサウナ。源泉からの湯気を直接スチームとして使っている。温度は高くないが、じんわり温まる心地よさがあり、蒸されながら、温泉を肌で飲んでいる感覚に陥る。




温泉から噴出する高温の蒸気熱で食材を蒸し上げる料理「地獄蒸し」。柳屋では、好きな食材を持ち込んで地獄蒸しを楽しめる。食材は地元のスーパー「マルショク」で調達。

地獄蒸しに適した梱包で売り場に並ぶ海鮮や野菜は、選ぶのも楽しい。

湯治柳屋
大分県別府市鉄輪井田2組 鉄輪銀座通り
TEL 0977-66-4414
https://beppu-yanagiya.jp
食べる温浴!別府の地獄蒸し

「ひょうたん温泉」の地獄蒸しは、お食事処で蒸し上げて提供してくれるスタイルと、ざるに盛られた食材を購入して自分で蒸し体験をできる2通り。地獄蒸し専門店での蒸し体験では、「地獄蒸し釡」と呼ばれる約100度の蒸気が噴き出す釡の中に食材を入れる。塩分を含む温泉の蒸気で一気に蒸すため、食材本来の旨みが凝縮され、ほんのり塩気や香りがきいた仕上がりに。




至る所から蒸気が噴き出す町、別府。鉄輪温泉の「地獄蒸し」は、江戸時代から伝わる。ここに、この文化に魅了され独自の料理を作るシェフがいる。40年の料理経験と薬膳の知識を活かし、地獄蒸し×中華というジャンルに挑戦。蒸し籠の編み目のミリ単位にまでこだわり、温度、蒸気の出方、食材全てに余念がない。唯一無二の地獄蒸し中華の世界が湯気とともに繰り広げられる。


まずは水を一滴も使わない温泉蒸気の薬膳スープを。

蒸士茶楼(むしちゃろう)
大分県別府市鉄輪 風呂本5組
TEL 0977- 85 -7775
サウナ・ウェルネスプロデューサー 笹野美紀恵
実家は、“サウナの聖地”として知られる静岡「サウナしきじ」。ホテルの温浴施設をプロデュースするほか、医療機関とオリジナルの薬草入浴剤を共同開発するなど、未病予防にサウナを活用する取り組みも行っている。
撮影 藤原次郎
コーディネート 菊池智子
取材・文・編集 中野桜子
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