ねぶた温泉が希望を届けた日 奇跡の湯は能登半島地震の後も再び湧き出した
その湯の温もりが、明日へ向かう力になった
「震災直後、一時的に干上がっていた源泉が1月末にまた湧き出して。それを見て私ももう一度、頑張ろうと思いました」
こう話すのは「能登の庄」の社長・大向洋紀さん。地震でダメージを受け、旅館としての営業は当面、難しい。それでも、能登の人たちに愛されてきた温泉、国内有数の高質天然アルカリ泉さえ無事なら、前を向ける。
「震災後、少し落ち着いてくると連日、近在の方々から電話が。『温泉にはまだ入れないの?』と。それで、7月から日帰り入浴を再開したんです。お風呂に来た皆さんの嬉しそうな顔を、私はこの先、忘れることはありません」
“奇跡の湯”と評される「ねぶた温泉」の成分値を基にした温泉の素や温泉水配合石鹸、フェイスマスクなど人気商品も多数揃える
ねぶた温泉 海游 能登の庄
石川県輪島市大野町鶴ヶ池72番地
能登の産業・文化を支える「野鍛冶」の力
明治41年の創業以来、暮らしの道具を作り、修理する「野鍛冶」の仕事を続けてきた。四代目の干場健太朗さんは言う。
「とくに漁師さんたちには、昔ながらの漁法、独特な道具があって、それをうちは作ってます。震災後は『仕事を再開してくれ、続けてくれ』という声を多数いただきました」
伝統産業の復興も支えた。「4月、輪島塗の木地作りに使う珍しい刃物が持ち込まれて。朝市通りの大火の焼け跡から掘り出されたものでした。地域の経済を回すため、何より伝統を絶やさないためにも重要と、最優先で修理させてもらいました」
ふくべ鍛冶
石川県鳳珠郡能登町字宇出津新23
案内人 浦出真由(ヌシヤ株式会社代表)
取材・文 仲本剛
撮影 須藤明子