1日1組客を迎える農家 民宿〜食の知慧 – 山と海、食材が伝統を作る – 2
北陸地方中央部に位置する、日本海側最大の半島「能登」。大部分は石川県に属していますが、実は東側の一部分は富山県氷見市に属しており、その富山県に面した海岸を内浦、半島の西側である日本海に面した海岸を外浦と呼びます。日本 海に長く突き出た半島ゆえに、漁業、水産業が盛ん。一方内陸は、標高200~500mの丘陵が連なった平地が少ない地形では、海と山に囲まれ自然豊か。そこは食材の宝庫。海と山の幸を毎日料理し、食す。そして受け継いでいく。それがごく当たり前のこととして循環している街でした。
地元の食材を 食べるだけでなく、 採って作って感じてほしい
1日1組の客を迎える宿「フォレスト」。宿主である森さやかさんはもともと宿としてではなく、自宅としてこの古民家を借りて住んでいたとのこと。暮らしているうちに、宿にするという選択肢に行き着く。そのきっかけにはやはり能登の食材があった。「能登ではもともと違う仕事をしていたのですが、蕎麦屋・お豆腐屋のおじいちゃんと知り合い、そのお師匠さんが山や海に連れて行ってくれていろいろな恵みを教えてくれたんです。採ってきたものを蕎麦屋に持ち帰るとスタッフの人たちが下ごしらえして料理する。その姿までしっかり見せていただいて。そうして知り合いが増えていく中で、山や海、そして畑がとても楽しくて。どの時季にどこで何が採れるのか。そしてそれをどうしたら美味しく食すことができるのか。その楽しさにすっかりハマってしまったんです。食材は地続きのものですから、お料理だけでなく衣食住含めて体験してもらいたかった。それなら宿かなぁと。2泊3日のお客様には希望のアクティビティを体験してもらっています。山菜採りに出かけて、帰ってきて下ごしらえしたり。また、食だけでなく『この花は1日しか咲かないけれど、あの人が来るから摘みに行くぞ』などと私も師匠に山へ連れて行ってもらってもいたので、身のまわりの自然でおもてなしをするということを近くで見てきて。宿ならそういった感覚も生かすことができるかなぁと。
フォレストのお食事を手伝ってくれるお母さんは、海女(あま)さんのように海に潜り、その後山菜やきのこを採りに山に入り、それから仕事へ行ったりしていて。私自身も本当に買うものが少ないですね。足りないものを買い足すという感覚です。その豊かさに一年中飽きないといえる土地が、能登なんです」
山の上で自然農法の畑をやっている婦人グループがいる。その畑の一角を借りているという森さん。畑へと向かう途中、知り合いを見つけ、話し込み、採れたもののお裾分けまでもらう。
農家民宿 フォレスト
石川県輪島市門前町和田6-31-1
TEL 0768-42-1022
https://notoforest.com
撮影:鈴木大樹 取材&文:桃本梨恵(Lita) 編集:中野桜子