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海にも優しい地産地消の燃料と、世代を超えた協業〜長崎、海と暮らす旅vol.5

海にも優しい地産地消の燃料と、世代を超えた協業〜長崎、海と暮らす旅vol.5

TRAVEL 2023.01 長崎特集

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海に囲まれ海と生きる、長崎県の人々の生活を感じる旅へ。「長崎、海と暮らす旅」vol.5では、海の恵みを享受するからこそ深刻に迫ってくる、昨今の環境変化のために力を注ぐ人たちの活動をフィーチャー。本誌の内容に加えてより詳細な内容や、真摯な思いに触れてみてほしい。

頑張る人を助けるCO2対策。燃料の“地産地消”を目指す

松浦でアジフライを提供する飲食店などから出た廃油を回収し、ディーゼル車を走らせるバイオ燃料へ。平戸市で浄化槽の維持管理、清掃業を営む「有限会社鶴丸設備」の取締役を務める上田博之さんは、そんな次世代の取り組みの中でも日本一を誇る純度99.95w/%以上という驚異の燃料を精製し、地元企業のCO2削減の助けとなるべく奔走している。

「機械にすべて任せるのではなく人の目と感覚を使い、薬品やプロセスの順番を組み替えるなど努力と試行錯誤を重ねることで、ここまで純度をアップさせることができました。鶴丸りか社長や先輩方など、まわりの人のアドバイスや手助けがあったからこそ実現できたこと。本当にたくさんの人に手をさしのべてもらったので、これからは自分が地域の人たちの助けになりたいんです」と上田さんは話す。

昨今のSDGs推進の動きにより、企業にはCO2削減のルールが定められるように。ただし新たな基準をクリアするには、例えば太陽光パネルの設置、電気自動車への買い替えなど、大きな資金が必要だ。そのような多額の負担があっては、コロナ禍の打撃も記憶に新しい地方の中小企業では持ちこたえられない。そこで注目されているのが、新しいバイオ燃料なのだという。軽油の代替燃料として新型のクリーンディーゼル車両に給油するだけでCO2排出の量をゼロカウントとして換算できるため、負担なく対策が叶うというわけだ。ちなみに鶴丸設備では、軽油よりも安価で販売を行っている。

「世の中には、社会のために一生懸命働いていても、“CO2が出るから”というだけで悪者扱いされてしまう企業も。国がルールを少し変えるだけで、潰れてしまう企業があるんです。でも、バイオ燃料を使えば、炭素税を気にせず働くことができるはず。今後炭素税が導入されたとき、経営が本当に苦しくて困っている地元の企業に、ぜひ使ってほしい」

原料となる揚げ物油などの廃油は、菜種油でも米油でも、植物性であれば問題なし。市中をまわって回収し、燃料を精製して地元に還元するという“地産地消”のモデルは、これまで海外からの輸入しか方法のなかった燃料調達の可能性を大きく拡げる。

「昨今、世の中ではコロナ禍や戦争といったショッキングな出来事が数多く起きていますよね。それを受け『今後も似たようなことが起こって日本に原油が届かなくなる可能性だっておおいにあり得る』と感じました。でもこの新しいバイオ燃料があれば、有事の際に海外から原油が届かない事態になったとしても、地産地消の燃料として調達が可能。火事が起きれば消防車を動かすことができるし、救急車が止まれば代わりにディーゼル車で病人を病院まで運べる。たくさんの命を救うことができると思うんです」

さらに上田さんは、燃料製造の過程で生まれるグリセリンが、洗剤や土壌改良肥料になることも発見。「水に溶けて微生物の食糧になり、界面活性剤を使用しない洗剤は、海にも優しいんです。もっと魚が生きやすくなったり、動物がのびのびと走りまわれたりするような社会の実現のために頑張りたい。何より、経営が苦しかったときに助けてくれた人たちが“あの子を助けてよかった”と心から思ってくれたら。そのために自分に何ができて、どんな努力をすればよいだろうかという意識が、日々の行動の指針になっています」

“好き”の気持ちを大切に。漁師と学生が組むタッグ

ウニが海藻を食べつくして起こる磯焼けに歯止めをかけるべくボランティアを始めたのが、長崎市内の大学でダイビングサークルに所属する学生たち。外海(そとめ)地区や伊王島地区の漁師と協働し、定期的な駆除活動に取り組んでいる。

船に乗って沖合へ出たら、ダイビング用のスーツに身を包んだ学生たちが次々と海の中へ。ハンマーや特殊な器具を使い、増えすぎたウニを一つひとつ手作業で潰していく。藻場再生のためのこうした活動は全国の漁師によって以前から行われているが、長崎市内で藻場の保全活動を行っている団体ではここ5年ほど、ダイビングを愛するフレッシュな学生たちの協力を得るようになったそうだ。今では海の中の様子をモニタリングしながら1年に2〜3回ほど、継続して実施されるように。

「好きなことが環境保護に役立つ喜びを知り、環境問題そのものにも興味が湧いてきました」と、「長崎大学全学スキューバダイビングサークルISANA」部長の西浦有紀さん。友人に誘われたことがきっかけで活動に参加するようになり、今では環境保全の意識を盛り込んだ卒業論文の執筆に取り掛かるまでになったとか。ほかの参加学生からも、磯焼けの問題性について意識が高まったとの声が。ウニ駆除活動を重ねることで藻場の状況が改善し、海の生きものやその多様性が増えたと実感できてもいるのだという。

楽しく取り組むうちに、ひいてはそれが地元のため、地球のためになっていくという成功体験とその喜びは、若い世代の環境問題への意欲と関心を向上させる。さらに、通常ならば貴重である地元の漁師との交流の機会を通して、漁業そのものについて知ってもらうきっかけにも。活動は評判を呼び、最近では長崎市だけにとどまらず、平戸市や南島原市など、市外の漁協からも声がかかっているそうだ。

写真:松園多聞 取材&文&編集:山下美咲

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