宮古ブルーを未来へ 海の生態系を守る人々と伝統漁100年の歴史
「宮古ブルー」と呼ばれる、圧倒的な海の青さ。この青は、宮古島と周辺の島々で紡がれた海の伝統によって守られてきたものである。資源に負担をかけない伝統漁を通して海を守る漁師、漁業関係者、ダイバー、ネイチャーガイドなど、島と海に関わる人々の視点を通して感じられるのは、宮古の海の豊かさと伝統。島の人々の未来に向けて抱く思いを伝える。
すべてが繋がることで奇跡の海が保たれてきた
「蝶の羽ばたきが嵐を起こす」。
無関係な出来事が、思わぬ形で大きな影響を与え合うことがあることを示す言葉だ。
奇跡の青ともいわれる宮古の海も、海に関わる様々な人々の活動が積み重なって現在の美しい姿を保ってきたといえる。100年以上の歴史を持つカツオ一本釣り、生き餌えを捕獲するアギヤー漁などの伝統漁は、過剰な漁獲を避けることで豊かな海の生態系を維持してきた。
光合成を通じて二酸化炭素を吸収し酸素を供給、海水の浄化にも貢献するモズクの漁も同様。海の透明度と美しい青色を維持する上では欠かせない。それぞれが、地域住民と自然とが共生してきた歴史を物語る貴重な文化遺産であり、宮古の海に貢献してきた営みなのだ。
「カツオの伝統漁が宮古島の海の青さを守ることに繋がっているのかどうかはわかりませんが、持続可能で環境に優しい漁法であることは確かです」。そう控えめに語る隆祥丸船長、久高さん。カツオの一本釣りとアギヤー漁といった宮古島の伝統漁は単なる漁業にとどまらず、生態系の上位に位置するカツオを対象とすることで、海洋生態系のバランスを維持。サンゴ礁の保護、地域社会との共生、そして観光資源としての価値など、多岐にわたる重要な役割を担っている。
島唐辛子を潰して醤油に混ぜ、釣り上げたばかりのカツオにかけて食べる漁師飯は格別。本来は酢味噌で食べるのが宮古島の伝統的な食べ方で、宮古のカツオの旨みを最大限に引き出すという。
伝統漁を支えることは単に食文化を守るだけでなく、豊かな自然を守り未来の世代に引き継いでいくことにも繋がる。カツオ漁の後継者が減る中、より多くの人が宮古のカツオを味わうことで、伝統漁は今後も引き継がれていくことが可能となり、宮古の海を守っていくことにも繋がる。
写真 高砂淳二
取材・文 山下マヌー
コーディネーション 河村美帆
編集 小嶋美樹