「南関あげ」はこうして作られるー「南関あげ」を訪ねて熊本へ-1
「南関あげ」は、熊本県の北西部、福岡県との県境にある玉名郡南関町特産の油揚げ。その成り立ちは諸説あるらしいが、江戸時代に現在の愛媛県、伊予松山から伝えられたと言われている。20センチ四方の大きな油揚げで、見た目はパリパリの揚げせんべいのよう。だからこそ、汁気を吸ったときの吸収力たるや、乾いたスポンジが水分を吸い込むがごとし。驚くほどふっくらとしてジューシーでもっちもち。そのうえ賞味期限は常温で2~3か月!まさにスーパー油揚げだ。
豆腐の水分を極限まで抜いて揚げる
「うちの南関あげの一番の特徴は、5~6ミリに薄くスライスした豆腐を、約1トンの加重をかけて1時間プレスし、極限まで水分を抜いてから揚げること。それにより、パリッとした歯ごたえとふっくらした食感の2つの味わいを楽しめるんです。プレスしない状態で揚げると、普通のしっとりした油揚げになります」
南関あげのシェア9割以上を誇る塩山食品の3代目、塩山治彦さんは言う。一日1万6千枚、冬は2万枚という大量の南関あげを、なんと一枚一枚手作業で揚げているという。
一枚一枚すべて手揚げで
「豆乳を作ったり、豆腐を作ってスライスするところなど一部は機械化されていますが、コアの揚げる部分に関しては昔から変わらずすべて手作業です。豆腐の生地の違いを手で感じながら伸ばしていくので、そこは人間の感覚がやっぱり大事ですね」(塩山さん)
まずは120℃の低温で1分ほど揚げると4倍の大きさに広がり、さらに水分を抜くために160℃の高温で5分ほど揚げる。
揚げたてはくずれやすくてカットできないため、常温でひと晩置くことで、水分が2~3%までになり扱いやすくなる。
カットするのも手作業で
「ちょっと湿気たおせんべいくらいのイメージです。手揚げなので厚みも形状もばらつきがあるので、さまざまなサイズにカットしてでき上がりです。みなさんも料理するときに立てて切るとくずれませんよ」(塩山さん)
塩山の南関あげ®は、サイズは大と小、味噌汁に使いやすいきざみタイプ、煮物に使いやすいタイプ、毎日使いやすいお徳用タイプなど幅広いラインアップ。今秋からは、国産大豆の南関あげ「極上 塩山の南関あげ®」も発売される。
塩山食品
熊本県玉名郡南関町小原32-2
塩山の南関あげ®は、通販のほか、特産品センターなんかん「いきいき村」やスーパー、空港などで購入可能。
撮影/白木世志一
取材・文・構成/和田紀子