薩摩切子の復刻 島津で栄え110年の沈黙を破り蘇った幻の伝統工芸

切子の中でも細かく繊細なカットと「ぼかし」がきいた、美しい色使いが特徴的な薩摩切子は、江戸時代末期、島津(しまづ)藩営の窯で誕生した。しかし藩主・島津斉彬(なりあきら)の逝去と激動の時代により、わずか二十余年でその製造は途絶え幻となってしまった。

戦火を越えてよみがえる。薩摩の伝統工芸は、人の手から人の手へと生き続ける
ところが約110年の沈黙を経て、1980年代に島津家の手で奇跡の復活。今もなお当時と同じ地で、職人たちが心を尽くし製作にあたる。薩摩切子の製造では、ガラスのベースをつくる“生地づくり(吹きガラス)”と“加工(カットガラス)”の二手に分かれてそれぞれ職人たちが作業に没頭する。そのどちらも過酷さと繊細さを伴い、一人前になるには少なくとも10年の月日を要するという。薩摩切子が復刻して以来ここで働くこの道40年の熟練の匠を目(ま)の当たりにすると、思わず圧倒される。



磯工芸館




切子と酒器を愉しむBarすけ
撮影 神林環
取材・文・編集 中野桜子
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