小学校の体育館と美味しいビールの関係 北海道を知る-5
広い草原の奥に愛らしいレトロな建物。これは学校と校庭とのこと。旧・鶴居村立茂雪裡(モセツリ)小学校を改築して「Brasserie Knot」は2022年に開業した。足を踏み入れると、廊下や黒板、教室や校訓などはそのまま残っている。
醸造家・植竹さんは、埼玉・川越「コエド・ブルワリー」、栃木「うしとらブルワリー」、北海道「忽布古丹醸造」、カナダ「Godspeed Brewery」を経てこの鶴居町を新天地に選んだ。
「実はクラフトブルワリーは農業などに比べ、そこまで自然環境に左右されないんです。だからこそ“自分がどう生きていきていきたいか”は場所選びの基準の一つになるかもしれません。僕は北海道にいつか住みたいと思っていましたし、一番大きな理由は、道東にはまだクラフトビールが根付いておらず、そういう場所で新しい文化を伝え盛り上げていくことにやりがいを感じたことです。そんな時、廃校の存在を知り、見に来たら天井高の体育館という場所が醸造にとても最適でした。体育館を醸造所に、体育館の舞台部分を直売所に改装。体育館のおかげで、発酵タンク5000Lを10本置くことが可能に。ここまで大きなクラフトブルワリーはあまり多くは無いと思います。また醸造所は水をたくさん使うので、安定した水質の水源があるということもこの土地の決め手に」
地元の人たちがオリジナルボトルを持参し、そこにビールを注いでもらい嬉しそうに帰っていく姿は、クラフトビールならではの幸せの形。
学校へのメッセージが書かれた黒板もそのまま置かれており、思わず笑みが溢れる。
今は草原のようになっている校庭もゆくゆくはイベントを出来たらと思っているとのこと。直売所へと続く通路には、クラフトビールのQ&Aについての分かりやすい展示もあり醸造工程を見学できる。
天井の高い体育館は、5000Lのタンクを置いても余裕があり、醸造所に最適。一つひとつの作業を手作業で醸造している。
「廃校は、天上の高い体育館など、ブルワリーにとても適していました」と言う植竹さんの言葉通り。
右から、道東エリア限定発売のDOTO、定番であるMOON、WIND、BIRD、FLOWER。全く違う味わいなので、まずは自分の好みを探してみよう。
Brasserie Knot
北海道阿寒郡鶴居村茂雪裡69-8
https://brasserieknot.jp/
取材、編集/柿本真希(Lita)撮影/鈴木大樹