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編集者桜子の番外編・灼熱サウナ撮影の裏側~北海道 雪サウナの贅沢6

編集者桜子の番外編・灼熱サウナ撮影の裏側~北海道 雪サウナの贅沢6

TRAVEL 2023.03 北海道特集

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サウナの撮影は時間と灼熱との戦い!?

今回はだいぶ遠征をしたわけで、北海道をほぼ横断した。その距離1000km‼︎運転をし続けてくれた北海道コーディネーターの太田氏には感謝。そして、灼熱のサウナ室でシャッターを押してくれたのはカメラマンyOUさん。yOUさんはご自身がサウナーで、国内のサウナをかなり網羅している。サウナエキスパートを取得してしまうほど、サウナ愛が深い。そんなyOUさんだからこそ撮りきっていただいたと言っても過言ではない。私もサウナを愛しているので、私たちにとっては幸せな撮影この上ないことがベースにある、ということは先にお伝えしておく……。

まず、サウナやお風呂などの撮影は“人がいない時間帯”で撮影しなければならない。従って、時間との戦いなのだ。旭川空港から始まった我々の旅……羽田から始発のフライトで向かっても、旭川空港到着は9時前。最初に向かうは白銀荘だが、営業時間(10時)前までに撮影してほしいと言われている。初っ端、無謀である。北海道の道は危険なため、道中は特に安全運転を心がけなければならないし、コンスタントに到着しても、撮影時間は数分だろうか。もし撮れなかったらまたどこかで数日後に引き返して来なければならない。何としても、今日、撮りたい。間に合う保証はないが、ルート的に初日に撮れるのがベストなので、一か八か向かう。幸い、お天気に恵まれ、道路は好調。札幌は大雪とのことだが、旭川〜富良野は晴天だった。さすが北海道、天候も各所で違うほど広い。yOUさんには車でカメラの準備をしてもらう。到着するやいなや、ご挨拶も後に、ひとまず大浴場へ通してもらう。白銀荘のかたも申し訳なさそうに「10 分でお願いします」と……10分!?ここから怒涛の駆け回り撮影がスタート。さすがはyOUさん。ありえないタイムスケジュールのなか、露天風呂、浴室とたくさんの角度から撮影をしてくれた。最後にいよいよサウナ室。寒い外気から中に入ると急速にレンズが曇る。これがサウナ撮影の難しさ。時間があれば、レンズをしばらくおいて温度に慣れさせたり、ドライヤーを使ったりと工夫もできるのだが、とにかく今は時間がない。早さとクオリティが求められるなか、yOUさんの神業で撮影が進む。最後に難題、ロウリュをかけるところを撮りたい。私がロウリュをかけ、yOUさんが瞬間を逃さずシャッターをきる。これがこの旅はじめての共同作業。無事、いい蒸気の瞬間を抑えることができた。

気づくと私たちはダウンコート姿でサウナで蒸され、汗だくどころの騒ぎではなかった。熱い熱いと外に出ると、一気に汗が冷え、冷たい。このあと白銀荘サウナを体験させてもらうのだが、熱々に整ったあの極上体験は忘れがたい。いろいろな意味で、いい汗をかいた。とにもかくにも、白銀荘さん、やさしく受け入れてくださりありがとうございました。

次に向かったのは帯広のグランピングリゾート、フェーリエンドルフ。こちらは到着が夕方だったため、大浴場の撮影は翌朝の6時の約束である。これまた早い。7時までに撤収しないと、お客様の利用時間になってしまうのだ。旅の初日ということで北海道のおいしいお酒をいただき、キックオフで盛り上がったものの、早朝撮影に備えた。北海道の朝6時は真っ暗で極寒。でも、そのおかげで絶景に出会えて、朝から大満足。やはり、旅撮影の朝はとにかく早い。

次に向かうは、知床KITAKOBUSHI。ここは本当に距離があるので、朝出発して着いたら夕方。この日はほぼ車で過ごしたということである。KITAKOBUSHIは世界遺産の見えるサウナがすばらしいので、撮影は明るい朝がベスト。翌朝お客様がチェックアウトしたタイミングで撮影に入る。サウナのクオリティがいいぶん、一瞬で汗をかく。服で入ると自分の汗だくさを実感する。そのまま急いで次の場所へ向かわねばならず外に出ると、温度差がすごい。私たちはこの旅で常に「整っている」のかもしれない。ありがたいことに、どうりで体が冷える、寒い、というタイミングがない。
さて、急いで笹野美紀恵さんの待つ阿寒湖へ向かう。そこでまた、時間との戦いが始まるのだ。15時までに撮影を終えてください、とのこと。阿寒鶴雅リゾートは、広くて多種のお風呂がある大浴場がウリ。入浴時間は15時から翌チェックアウトまでと、一晩中入浴することができるのだ。宿泊者にとってはありがたい。が、我々はこの15時までのタイミングを逃すことができない。笹野さんとロビーで会い、真っ先に大浴場へ。笹野さんのすばらしい身のこなしは編集者としてとてもありがたく、感謝すべきものだった。下に水着を着ていてくれて、すぐにポーズをとってくれる。サウナ撮影の一番のプロである(ここは裸で入浴する施設だが、撮影用に水着着用で撮影)。数々のサウナやお風呂を撮らなければならないのだが、阿寒、そしてその後のサロマ湖と笹野さんのおかげで快調に撮影ができた。

阿寒の晩は、「これでおいしいビールが飲める、楽しい宴は言うまでもない」と思いきや、翌朝はどうしても鶴を撮りたい。鶴に会える確率が高いという鶴居村には、朝4時の出発が要される。23時半、展望ドームサウナと夜空の撮影を終え、一同は急いで就寝した。

yOUさん、ネイチャーカメラマンに!?鶴に会える奇跡は起きるのか。

話は脱線するが、この旅は動物チャンスに恵まれた。撮れ高が全くわからないのだが、なるべく動物に出くわしたらカメラにおさめたい、とyOUさんにもあらかじめお願いしていたので、望遠レンズを持ってきてくれている。
 阿寒滞在中に、「阿寒湖といったら鶴」ということで、鶴との遭遇率が高いという「鶴居村」を目指した。鶴は早朝まだ暗いうちから見張っていると会えるという。ということは、待機は相当な朝方からである。我々のホテル出発時刻は4時。とにかくこの旅で一番寒かったのはここだったことは記憶している。鶴スポットである橋に着くと、もう数人のカメラマンが待機していた。カメラマンたちのカメラの先を見ても、肉眼ではまったく見えない。鶴なんていないではないか。
じーっと立っているほど寒いことはない。私は今回持ってきたできる限りの衣類をまとって雪だるま状態で行ったが、それでも寒い。「あぁ今すぐサウナに駆け込みたい……」。

遠い目をしていると、yOUさんに小声で話しかけられる。「いるよいるよ」よーく見ると、彼方で一羽動いたような?いや、一羽ではない。たくさんの鶴が群でいるではないか。

おびただしい鶴たちが丸くなっている。これは、羽を広げた姿を絶対に見たい! 一気に眠気がふき飛んだ。気がつくと、カメラマンはどんどん増えている。ここからが精神勝負。じっとその瞬間を待つ。待つこと何十分経ったか。初めて来たので、いつも鶴たちがどんな動きをするのかわからないうえ、私たちにも時間のデッドがある。先が見えない…もう諦めるべきなのか……私はふと、隣の長身のカメラマンに話しかけた。「待っていたらあの鶴たちは撮れるんですか?」その男性も久々にここに撮りに来たということで自信はなさそうだったが、朝日とともに鶴がこっちに向かって飛び立つ、ということを教えてくれた。なるほど……それならばもう少し粘りたい。だんだんと少しずつ、空が白くなり始めている。寒さと戦いながら小刻みに足踏みをして待っていたそのとき……! 一羽の鶴がまさにこっちに向かって低空飛行で飛んでくるではないですか。少しざわついて、みんなのシャッター音が一気に加速する。

驚いたことに、その鶴は私たちの橋の真近へ着地し、スイスイとモデルのように歩き回っている。鶴をこんなに目の前で見たのは初めてである。絵に描いたようなタンチョウヅル。そのまま鶴はモデルウォークを続け、ときに羽を広げたり、エサを探して食べたりと、警戒心ゼロでその姿を見せてくれた。なんだか奇跡に近い体験をしたような不思議な気持ちになった。寒さも眠気も忘れ、撮れ高に満足しながら一同はホテルへ戻る。朝のサウナと朝食がキンキンの体にしみた。

この旅では、願い叶って鹿、オジロワシ、キツネ、そして鶴に会うことができた。yOUさんは車の中でも、いつでもカメラをスタンバイしてくれている。キツネに会ったときも不思議な感覚だったのだが、そのキツネは道中で突然、反対車線をトコトコと歩き、私たちの車に駆け寄ってきた。目の前で立ち止まり、じーっと目線をくれた。白い雪景色に映え、その毛並みと瞳はとても美しかった。

オジロワシを抑えたときは、yOUさんはネイチャーカメラマンだと確信した。大きなワシは飛び方がゆぅらゆぅらと、予測不能で速く、焦っていると逃してしまう動きだった。ワシは鳥の中でも大きいと言われるが、飛ぶ姿は本当にかっこよかった。野生の動物に巡り会うのは運。自分たちの運に感謝した。とともに、それだけ豊かな自然の世界に私たちがお邪魔させていただいたことに、感謝を抱いたのだった。動物をウォッチングするツアーやアクティビティに参加するのも楽しいが、こうしてばったり出くわすと、よりドキドキして、格段に心に残る。

未知の世界でハードなスケジュールだっただけに不安も抱えながらの旅だったが、天候や運にも恵まれ、すばらしいスタッフで漏れなくベストな撮影をすることができ、終始楽しく過ごすことができた。北海道という大自然で経験した大冒険のノンフィクションは、忘れることはないだろう。そしてますますサウナが大好きになった。来月、さっそく北海道へのプライベート旅行を計画している自分がいる。

文&写真/中野桜子 写真/yOU(河崎夕子)

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