雲海の先に富士を望む 祈りと歴史が重なる足利・大岩山の特別な時間
室町幕府を開いた足利氏の発祥地として、いまも歴史の層が色濃く残るまち・足利。
山上にそびえる大岩山では、日本三大毘沙門天の一つが263年ぶりに出開帳(でがいちょう)された。
豆まきの起源とされる“毘沙門天の夢のお告げ”や、2021年の山林火災であらためて現れた結界伝説、さらには多くの文人墨客が逗留(とうりゅう)した旅荘。
祈りと文化が重なり紡がれた歴史の道をたどれば、いまだけ開かれた特別な扉の前に立つ旅へと、自然と心が誘われる。
霊峰を見つめる毘沙門天——千年の祈りが宿る足利、日本を照らす祈り

雲海がそっと大地を抱く朝、目覚めの前の一瞬だけ夢のような時間が訪れる。白く沈む街並みのはるか向こう、東京の影が淡く滲み、そのさらに彼方には、静かに富士が姿を現す。
江戸のころから秘仏として御堂に納められてきた毘沙門天。今回の出開帳によって、仏師の名が判明しただけでなく、尊像がわずか5度だけ右を向いていたことも明らかになった。なぜ正面ではなかったのか──その視線の行き着く先を探したとき、浮かび上がったのは江戸時代に噴火した富士山だった。
3月、毘沙門天は再び御堂へ戻る。しかしその目が捉えるのは、遠くの霊峰だけではない。聖徳太子や行基が紡いだ、国の平和への祈りを託されて、災害や疫病、貧困に苦しむ人がいないようにと、広く世界を見渡している。この足利というまちに1280年、脈々と受け継がれてきた祈りの心は途切れずに続いていく。
足利への翼
足利へはANA便で羽田空港へ。
羽田空港から首都高、東北自動車道を経由して北関東自動車道で「足利IC」へ。
写真 宮澤正明
取材・文・編集 服部広子
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