悪縁を断ち自分に向き合う――祈りと文人たちの逗留地・足利を歩く
室町幕府を開いた足利氏の発祥地として、いまも歴史の層が色濃く残るまち・足利。
山上にそびえる大岩山では、日本三大毘沙門天の一つが263年ぶりに出開帳(でかいちょう)された。
豆まきの起源とされる“毘沙門天の夢のお告げ”や、2021年の山林火災であらためて現れた結界伝説、さらには多くの文人墨客が逗留(とうりゅう)した旅荘。
祈りと文化が重なり紡がれた歴史の道をたどれば、いまだけ開かれた特別な扉の前に立つ旅へと、自然と心が誘われる。
悪縁を断ち、良縁を呼び込む日本一の縁切り稲荷
鳥居が連なる門田稲荷神社は、日本一の縁切り稲荷として知られる。悪縁を断ち、良縁を招く信仰はいまも息づき、訪れる人々は祈りを通じて自らの心と向き合う。人間関係の悩みに対して、「神様に頼るのではなく、自分自身で解決することが大切」と宮司・尾花章さんは説く。
門田稲荷神社
栃木県足利市八幡町387
祈りのまちに育まれた旧家の伝統漂う文人の宿
その祈りの空気は町の文化にもつながる。足利氏ゆかりの旧家・巖華園には江戸時代から高野長英など文人墨客が寄寓。戦後、社交クラブとして発足し、のちに旅館となってからは、檀一雄、坂口安吾ら文士や岡本太郎、森繁久彌なども逗留していた。

朱の鳥居や神社仏閣、庭園や歴史建造物が織りなす街並みは、祈りと文化が静かに交錯する景色を映す。祈りに育まれた町だからこそ、訪れる人々は心静かに、自らの創作や思索と向き合うことができるのだろう。

谷文晁(たにぶんちょう)が作庭し、渡辺崋山が名づけた庭園は、自然の岩に華を添える造形美で知られ、栃木県初の名勝に登録されている。葛飾北斎が行道山を描いた『くものかけはし』(右下写真)や南画家・高隆古の屏風『富士巻狩図』など、文化人たちが遺した貴重な作品も多数収蔵されている。

巖華園
栃木県足利市月谷町8-1
足利への翼
足利へはANA便で羽田空港へ。
羽田空港から首都高、東北自動車道を経由して北関東自動車道で「足利IC」へ。
写真 宮澤正明
取材・文・編集 服部広子
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