メインコンテンツにスキップ
国枝慎吾がジュニア選手に伝えるメンタルの強化法 全米100面コートでの挑戦

国枝慎吾がジュニア選手に伝えるメンタルの強化法 全米100面コートでの挑戦

LIFE STYLE オーランドの空の下で

share

※ この記事は、翼の王国2024年9月号に掲載されたものです。

私はいま、全米テニス協会のナショナル・キャンパスで、アドバイザーとして働いています。日本にもオリンピックやパラリンピックの選手のための、ナショナルトレーニングセンターという立派な施設があります。ですが、決してテニスに特化した施設ではありません。いっぽう、そこはグランドスラム(四大大会)の開催国。アメリカにはテニス専用の、強化選手のための施設があるというわけです。日本のナショナルトレーニングセンターには4面しかないテニスコート、ここナショナル・キャンパスにはなんと100面もあるんです。

この広大で、素晴らしいトレーニング施設で私は、車いすテニスのジュニア選手たちを週4~5日、指導しています。

昭和の人間だからでしょうか、私は「競技には根性も大事」と昔から思っておりまして。コーチングに際しても、とくに精神面を重要視して指導しています。あくまでも個人的な意見ですが、アメリカの選手はなんとなく、エンジョイすることに気持ちのベクトルが向いている気がしていて。もちろん私も、テニスは大好きですし、楽しい。でも、いちばん楽しいのは、自分の力を100パーセント出し切ることと思っているのです。そのことを、ジュニアの選手たちにも日々、伝えています。

車いすテニスはルール上、2バウンドまでは許されているわけですが、たとえボールが3度バウンドしたとしても「追え!すべてを出し切れ!」と何度も何度も、拙(つたな)い英語で(苦笑)。そうやって、彼らの心のスイッチを切り替えることに腐心してきたのです。

果たして、まだ半年ほどですが、選手たちの意識が変わってきたのを実感しています。練習中から、一球一球を大切に、全力を尽くすことができるようになってきました。先日も16歳のチャーリーくんという男子選手が、シニアの大会で初優勝するまでに。気持ちが変わると、生活態度が変わり、そしてプレーのクオリティが上がって、そこで結果が伴うようになると、さらに気持ちが強くなって……。この好循環の延長線上に、世界のトップ選手になる道が続いている。そのことを、少しずつ理解し始めたジュニアの選手たち。最近、彼らの顔つきが大きく変わってきたことを、私はなによりも、嬉しく思っているんです。

国枝 慎吾

脊髄腫瘍のため9歳から車いす生活となり、11 歳で車いすテニスと出会う。四大大会とパラリンピックを制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成。23年1 月、世界ランキング1 位のまま引退。

2016年よりスポンサーシップ契約を結んでいるANAは、国枝さんの新しい挑戦を応援し続けます。

翼の王国のアンケートにぜひご協力ください。
抽選で当選した方にプレゼントを差し上げます。