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歌舞伎俳優・中村扇雀 勘三郎のお兄さんと通った浅草・観音裏の名店

歌舞伎俳優・中村扇雀 勘三郎のお兄さんと通った浅草・観音裏の名店

LIFE STYLE KABUKI

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[私の“二枚看板”]第八回/案内人:中村扇雀

歌舞伎俳優たちの舌を魅了した「祝着至極」のメニューを毎月2皿ずつ、紹介します。第八回は、世話物から時代物、新作に至るまで、舞台に欠かせないこの人。

私が料理屋さんを選ぶ基準、それは料理人さんの人柄、そしてセンスです。その意味では、今回ご紹介するお店は、どちらも甲乙つけ難い、申し分のない2店です。

まず1店目は「浅草おでん大多福」。浅草・観音裏のおでんの名店です。こちらは2000年、中村勘三郎のお兄さんが始めた「平成中村座」の、最初の公演のときから通っています。当時、勘三郎のお兄さんは「浅草で食べて、浅草で飲んで、皆で浅草の町を盛り上げていこう」と話されていて。それで、舞台後によくこちらにもお邪魔しました。それ以来のお付き合いです。最近、建物が新しく綺麗になりましたが、古い日本家屋のころも趣があって。いまも昔も雰囲気のある、いいお店。以前はカウンターに座るためには行列に並ばなくてはいけなくて。私はもちろんですが勘三郎のお兄さんも、同行者一同もちゃんと並んだんですよ。それほどの価値あるお店。すべてが美味。おでんに至るまでの酒の肴、刺身に魚の西京焼き、鶏のタレ焼き、もう全部が絶品です。

なかでも、私が必ず注文するのが「牛すじ煮込み」。これ無茶苦茶、美味しいんです。柔らかく煮込まれたすじは味がしみていて、酒のアテに最高。もう、やみつきになること請け合いですよ。

おでんももちろん美味しい。東京では珍しい鯨の「ころ」(脂身)と「さえずり」(舌)があるのも嬉しいんです。そして、最後の最後に私は白飯を軽く一膳、注文します。そこにしっかり煮込まれた「たまご」をのせて、潰しまして。その上からおでんのお出汁をかける。これをいただくのが大多福さんでの、扇雀流の締めルール……、ああ、もう話しているだけで、食べたくなってきました(笑)。

2店目は、大阪・心斎橋のイタリアン「PESCE ROSSO(ペッシェ・ロッソ)」。私はお店選びの基準を「料理人の人柄とセンス」と先述しましたが、こちらのシェフ・山中伸彦さんはそのどちらもが素晴らしい。
こちらで今回、紹介させていただくのが「黒トリュフたっぷりのリゾット トロトロ温度卵添え」です。イタリア産の黒トリュフをリゾットが見えなくなるぐらいスライスしてくれるという、なんとも贅沢な逸品です。
とにかくこちらは、前菜、セコンド、メイン、ドルチェとすべてのメニューオススメなのですが、もう一皿、どうしても紹介したかったのが「フォアグラのブルスケッタ」。残念ながら現在、フォアグラが入手困難ということで今回は外しました。でも、私は「フォアグラってこの食べ方がいちばん美味なんじゃないかな」と、いただくたびに思うほどなんです。お店に行かれて、もしメニューにありましたら、こちらもぜひご賞味いただきたいと思います。

なかむら・せんじゃく

60年、東京生まれ。父は坂田藤十郎。母は参議院議長も務めた扇千景。兄は中村鴈治郎。67年、歌舞伎座『紅梅曾我』の箱王丸で中村浩太郎を名のり初舞台。95年、大阪・中座『本朝廿四孝』の八重垣姫ほかで三代目中村扇雀を襲名。〝人間国宝〟の父が大切にしてきた「和事の芸」の継承者として芸を磨く。18年、その父から日本舞踊雁音流二代目家元雁音歌扇を引き継いだ。

浅草おでん大多福

東京都台東区千束1-6-2 NS言問ビル1階

tel:03-3871-2521

営業時間:16:00〜22:00(L.O. 21:00)

定休日:月曜

100年以上の歴史を誇る、浅草・観音裏の老舗。看板メニューのおでんは「昆布」、「粟ぶ」(ともに110円)、「ちくわぶ」(220円)、「エビ爆弾」(550円)などどれも絶品で、テイクアウト(3,800円から)もできる。そのほか、旬の魚の刺身など、さまざまな季節の逸品も楽しめる。扇雀さんのイチオシは、トロッと柔らかな食感と濃厚な味わいの「牛すじ煮込み」(1,100円)。

https://otafuku.ne.jp

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PESCE ROSSO(ペッシェ・ロッソ)

大阪府大阪市中央区東心斎橋1-3-18

tel:06-6241-0030

営業時間:18:00〜24:30

休日:月曜(祝祭日の場合は営業)

街の喧騒を忘れさせる非日常空間で、厳選された食材から紡ぎ出される本格イタリアンが楽しめる名店。基本的には「おまかせコース」(8,000円〜、注文は2名から)がオススメだが、扇雀さんが紹介してくれた「黒トリュフたっぷりのリゾット トロトロ温度卵添え」(6,800円)など、アラカルトでの注文もできる。

https://pesce-rosso.com

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絵:矢野元晴