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三つ星鮨 あら輝で「やられた!」 鮨で感じた“自由の更新”を花で表す

三つ星鮨 あら輝で「やられた!」 鮨で感じた“自由の更新”を花で表す

LIFE STYLE 花、旅、人

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ピンクッション/ Pincushion

おいしいものに目がない私。極上の味を口にしたとき、いつも胸中でつぶやくのが「やられた!」という言葉。「花人」として表現を続ける私にとって、これは、大切な刺激をいただく瞬間でもあると思っています。 

先日、私は東京・赤坂の鮨店「あら輝」にお邪魔しました。世田谷で開業したのち、銀座に移転し世界的グルメガイドで三つ星を獲得。その後、イギリス・ロンドンに移りそこでも三つ星、さらに香港でも一つ星を獲り、昨年春、帰国し赤坂で再オープンしたお店。そんな超名店が供してくれる握りは、決して奇を衒(てら)ったものではありませんが、一貫ごとに「自由で深みのある、唯一無二の世界観」を感じさせます。 

一般的な鮨店では、おまかせで握りをいただくと、白身に始まり、次に光り物、3貫目に赤身……といった具合で、全体的なコンビネーションでバランスよく美味を作り上げていくのが定石。ところが「鮨」でも「SUSHI」でも、世界で星を獲得してきた“名人”は「すべて、前の握りを超えていきたい」と言うのです。つまり1貫目より2貫目、2貫目より3貫目と美味が次々、上書きされていくことを目指している、と。実際、いただいてみると、そのとおりで、1貫目に「おいしい!」と唸(うな)っても、次の鮨を口にした途端、あまりのおいしさとその衝撃に、前に食べた鮨の味を忘れている自分がいます。美味が最初から最後まで、記録を更新し続けていく、それが「あら輝」のお鮨なのです。 

今回、私から皆さんに贈るのはピンクッションの装花です。本来、花は軸を下にして活けるものかもしれません。でも「あら輝」で“やられた”私は、「花だけれどもHANA」、そんな自由な気分を表現してみたかったのです。

赤井 勝(あかい まさる)

65年、大阪府生まれ。花を通じ心を伝える自らを「花人」と称し、自身の飾る花を「装花」と呼ぶ。08年、北海道洞爺湖サミット会場を花で飾り、13年、伊勢神宮式年遷宮では献花を奉納。昨年、 大阪府堺市に「Akai Masaru ArtMuseum 」をオープン。