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グリーンネックレスがつなぐ奇妙な縁 林修さんの粋な計らい

グリーンネックレスがつなぐ奇妙な縁 林修さんの粋な計らい

LIFE STYLE 花、旅、人

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これもきっと、花が繋いでくれた縁

今月の装花の“主役”はランの仲間・パフィオ。ですが今回、私がご紹介したい話のテーマに沿っているのは“脇役”のほう、緑の数珠のような多肉植物・グリーンネックレスです。

それは、2年ほど前のこと。私の携帯電話に、未登録の番号から着信がありました。このご時世、基本的には知らない番号の電話には出ないようにしています。ですが、何度も同じ番号からかかってくるので仕方なしに出てみると、相手は「噴火湾」とも呼ばれる北海道・内浦湾の海産物を扱う水産加工会社の社長でした。聞けば、テレビなどで活躍している予備校講師の林修さんと、家族ぐるみのお付き合いをされていると言います。

林先生とは、彼が司会を務める番組の装花を担当するなど、私もとても親しくしています。そう、社長は林先生から私の電話番号を教わっていたわけです、私の知らないうちに(笑)。

優しい人柄がにじむ、少しお国訛りのある言葉で矢継ぎ早に話す社長。でも、マシンガントークは1時間を過ぎても止まりません。初めての電話なのに、なんだか旧知の友人と話しているような、そんな風情です。「いつでも遊びに来て。待ってるよ」と告げて、社長は電話を切りました。

以来、定期的に彼から電話がくるように。そのたびに「いつ来るの?」と。ときには「いいものが獲れたから」と新鮮な魚介を送ってくれて、私からは花を送ったりも。ですが、この2年間、私は社長の誘いに応えることができないままなのです。

そして、いま。ニュースなどで「北海道」という単語に触れるたび、妙な罪悪感に駆られる自分がいます。「さすがにそろそろ……」と気が気でないのです。何故こんな追い詰められた気分に、と自分でも笑ってしまいますが、きっと今年、私は北海道を旅することになると思います。面識がないにもかかわらず、すっかり親しくなった社長を訪ねに。

数珠のように繋がった奇妙なご縁──。ときにはこんなきっかけで旅に出るのも悪くない、そんなふうに独りごちる今日このごろなのです。

赤井勝(あかい・まさる)

1965年、大阪府生まれ。花を通じ心を伝える自らを「花人」と称し、自身の飾る花を「装花」と呼ぶ。2008年、北海道洞爺湖サミット会場を花で飾り、2013年、伊勢神宮式年遷宮では献花を奉納。2017年、フランスのルーブル王宮内パリ装飾芸術美術館で開催の「JAPAN PRESENTATION in PARIS」でも桜の装花を担当した。昨年、大阪府堺市に「Akai Masaru Art Museum」をオープン。

編集 仲本剛

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