医師が勧める 新幹線より飛行機に乗るべきメリット
飛行機は脳に優しい乗り物
東京の私の頭痛外来には、関西からわざわざ通院してくださる患者さんも少なくありません。そんな患者さんたちに「どうやって上京されましたか?」と尋ねると、ほとんどの方が「飛行機で来ました」と答えます。実際に移動している時間は、飛行機のほうが断然短い。でも、空港までの移動や、保安検査や荷物のチェックインなどに要する時間を考えると、関西から東京まで、ドア・ツー・ドアの時間は、飛行機と新幹線に大差はないようにも思います。それなのに患者さんたちの多くは飛行機を好んで使われる、その背景には新幹線の特性が関係していそうです。
ある患者さんは「トンネル通過時や対向列車とのすれ違いのとき、車内の気圧が大きく変化する感覚が苦手だから」と話します。また、別の方は、車窓からの眺めを理由に挙げました。「窓の外の景色が、猛スピードで流れていくのを見ていると、目が回りそうな気分になります」と。たしかに、刻々と移りゆく景色や、急変する気圧差は、変化に敏感な頭痛持ちの脳を刺激し頭痛を引き起こす可能性があります。日ごろから頭痛に悩まされている患者さんたちの多くが新幹線ではなく、自然と飛行機での移動を選んでいたのはそこに理由があるのかもしれません。
離着陸時を除けば、機内の気圧は安定し、機窓からの眺めも、遠い山並みや眼下の島並みがゆっくり、ゆったりと流れていく……。そう、じつは飛行機というのは、脳にとってはとても優しい乗り物だったというわけです。
それでも、上空の機内は地上に比べて気圧がやや低いため血管が広がりやすい環境でもあります。搭乗前に飴玉を舐めて血糖値を少し上げておきましょう。脳の血管が広がりにくくなり、頭痛が起こるのを防いでくれます。
笑顔になる処方箋
搭乗前に飴玉を…また機内ではゆったりと景色を楽しみましょう
脳神経外科医・清水俊彦(しみず・としひこ)
脳神経外科医。医学博士。1958年、京都府生まれ。日本医科大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院博士課程卒業。現在、東京女子医科大学をはじめとする複数のクリニックで頭痛外来を担当し、一日あたり数百人の患者さんを診察する、頭痛研究の第一人者。著書やメディアへの出演も数多い。