福澤諭吉ゆかりの地を巡って 医師が語る旅のリフレッシュ効果
トップアスリート、アーティスト、経営者が通う会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」代表の竹下雄真さんが、各界のトップランナーと対談し、旅を通したウェルネスや仕事術、地方創生などのお話を伺う新連載。第1回目のゲストに医療機関「医療法人社団なかよし会 麻布台クリニック」(東京・港区)理事長・髙田哲也先生を迎え、「ウェルネスと旅」をテーマに、医師が考えるウェルネスやご自身の健康習慣、そして旅を通したウェルネスの実現についてお聞きしました(全5回の3回目)。
仲間との絆を深めたヨーロッパの旅
竹下 人がよりよく生きるためには、仲間や家族の存在も大切だと思います。近年、医療分野やスポーツに限らず、ツーリズムなどの分野でもウェルネスという言葉が用いられるようになりました。髙田先生は、旅行はされますか?
髙田 家族がおりますので、今はもっぱら家族旅行が主体ですね。妻が旅好きなこともあり、休日にはちょくちょく出かけます。行き先によってそれぞれ雰囲気も違いますし、海外旅行は特にそうですが、環境ががらりと変わるのでリフレッシュしますよね。日ごろの煩わしさから解放されて心の洗濯になるのは間違いないです。
竹下 昔はどのような旅をされていたんですか?
髙田 毎年、両親とはパリに行っていました。初めての海外旅行は幼稚園生のときのハワイで、飛行機に乗った高揚感からものすごくはしゃいでしまい、両親にすごく叱られたことを今でもはっきり覚えています(笑)。印象に残っているのは、大学生のときに友人とヨーロッパを旅したことでしょうか。電車の旅で、「トーマスクック ヨーロッパ鉄道時刻表」という時刻表を見ながら、ここに行ってみよう、これを見てみようと、行き当たりばったりの旅でした。ホテルも予約せず、その場で交渉する、みたいのが面白くて。男6人で夏休みに10日間くらい、途中バラバラに行動して、最後にパリで合流しました。
竹下 それは慶應ボーイの遊び方ですよ。パリに集合しようなんてお洒落だなあ(笑)。ヨーロッパはどちらに?
髙田 ウィーンからミュンヘンへ行って、そこからフランスのストラスブールに向かって、最後にパリに到着したという記憶があります。ヨーロッパ旅行といえば、慶應義塾の創設者でもある福澤諭吉の足跡を辿る「福澤先生ゆかりの地を巡るツアー」にも参加したこともありました。慶應主催のツアーだったので旅費が比較的安価だったことと、マニアックだけど面白そうだなと興味を持って参加したんです。福澤研究会の教授や学生担当の教授、事務局の方なども添乗していたので、行く先々で解説してもらえるのもとても有意義でした。私は当時5年生で、ツアーに参加した生徒の中では一番上だったんです。自由行動も多くて門限も特になかったし、毎晩のようにお酒を飲んでは私の部屋で深夜まで語り合いました。とにかく、仲間とのそういう時間が楽しかったのは今でも忘れられないですね。そのときのツアーに参加した仲間との付き合いは、いまだに続いていますよ。
竹下 旅は、誰と行ったか、どんな出会いがあったか、というのが大事ですよね。
鐘楼、ムール貝、文具店……福澤諭吉の足跡を辿る
髙田 福澤諭吉のツアーは、普段の友人たちとは違うメンバーだったので何か違ったし、そんなときほど物語が生まれるんですよね。そのツアーで出会ったフランス人カップルと仲良くなって、その方たちが旅行で日本に来たときに再会しました。旅って、そういうところがいいなあと思いますね。
竹下 福澤諭吉のゆかりの地を旅するツアーは、ヨーロッパのどのあたりを回られたんですか?
髙田 福澤諭吉が1861年に文久遣欧使節団の一員として1年間ヨーロッパを巡遊していて、フランス、イギリス、オランダ、プロシア、ロシア、ポルトガルの6カ国を見聞したことが書物などにも残っています。私が参加したツアーは、その中から4都市を選び、オランダのロッテルダム、ハーグ、アムステルダム、そして、フランスのパリを訪ねました。オランダのどこだったか、鐘楼を見て、そこで食べたムール貝が美味しかったんですよ。パリでは、「ホテル デュ ルーブル」に行きました。創業1855年のホテルに遣欧使節団の一行が宿泊したのは1862年、パリで日本人が最初に泊まったといわれています。19世紀半ばの雰囲気や内装がそのまま残っているという印象でした(ホテルは2009年にリニューアル)。それから、福澤諭吉が手帳を購入したことで知られる「フォルタン文具店」のあった建物も見学しました。文具店はすでに移転していたのですが、福澤諭吉は、ここで買った手帳にパリでの出来事を記したんだなあと思いを馳せましたね。その手帳がのちに「西航手帳」と呼ばれるようになったものです。
デポルターレクラブ代表 竹下雄真 | たけした ゆうま
会員制トレーニングジム「デポルターレクラブ」代表。1979年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。都内パーソナルトレーニングジムにてトップアスリートをはじめ多くの著名人の肉体改造に携わる。そのほか、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、早稲田スポーツビジネス研究所招聘研究員、経済産業省地域×スポーツクラブ産業研究会委員などを務めている。著書に『外資系エリートはすでに始めているヨガの習慣』(ダイヤモンド社)、『ビジネスアスリートのための腸コンディショニング』(パブラボ)などがある。
麻布台クリニック理事長 髙田哲也 | たかだ てつや
医師・医学博士。医療法人社団なかよし会理事⻑(日吉メディカルクリニック・麻布台クリニック)、医療法人社団侑芯会会⻑、医療法人社団こうかん会理事、慶應義塾大学医学部内科学教室特任助教。1975年生まれ、神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学医学部卒業。「多くの医師との連携を躊躇せず、患者さんに安心の医療を提供する」をモットーに、外来診療や産業医活動を行いつつ、医療機関の経営にも携わる。「グッドドクター」「監察医朝顔2」など、メディアでの医療監修も多数。
写真 細田純平
取材・文・編集 服部広子
次回の「旅で解放する」は7月12日(金)配信予定。わくわくする旅の秘訣についてお届けします。