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熊野古道と白良浜で心洗われて 和歌山の地元グルメを極める旅

熊野古道と白良浜で心洗われて 和歌山の地元グルメを極める旅

ENTERTAINMENT 和歌山県

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数千もの伝承の中から、都道府県ごとに一匹の妖怪を選び、造形作家森井ユカの独自の解釈で創造しました。妖怪に誘われるがまま旅すると、美味しいもの、きれいな景色に必ず出会える! ? ようこそ、空飛ぶ百鬼夜行へ。

和歌山県 送り雀(おくりすずめ)

「夜道に気をつけてお帰り」チュンチュン鳴いて見送ってくれる、見えない雀

熊野本宮大社の近くの伝承。夜道、チュンチュンと鳴きながら雀がついてくる。魔物から守り目的地まで安全に送り届けてくれるが、その後ろにオオカミがいることもあるから要注意。

雀の後ろにオオカミが危険を申し送る古(いにしえ)の民話

豊かな海産物、穏やかな気候に恵まれた和歌山県。いつものように県立図書館の郷土史のコーナーに赴き、地元発祥の妖怪「送り雀」について調べてみた。多くの伝承をまとめるとこのようになる。

〜夜道、雀が鳴きながらついてくる。姿は見えないが、家まで送り届けてくれる。しかしその後ろにはオオカミがいるかもしれない。もしもその姿を見たならば、水を差し出しねぎらいの声をかけると去っていく。

夜道に警戒せよという警告を担う妖怪であろう。ここではふたつの動物を掛け合わせた姿で造形してみた。

四季折々の景観の中にある大斎原大鳥居は、熊野本宮大社から徒歩10 分ほど。

おもな伝承地である本宮町本宮の中の熊野古道(くまのこどう)に赴く。熊野本宮大社は全国4700社以上ある熊野神社の総本宮で、二千数百年もの歴史を持つ日本有数の霊所となっている。

熊野本宮大社に向かう石段。ここを通って大斎原大鳥居へ向かうのが正しい。

傍に建つ、鉄製で高さ約34メートル、日本最大の大斎原(おおゆのはら)大鳥居の神々(こうごう)しさに震える。周辺には観光バスが乗り入れる国道のほかに、無数の山道が存在する。高名な神域によくあるとおり、穏やかな山道は少なく、石段も多い。

大昔、ここで提灯(ちょうちん)をたよりに夜道を歩かねばならないとしたら、確かに想像以上の危険が待ち受けていただろう。幸いオオカミはついてこなかったので、関西圏有数の白い海岸、白良浜(しららはま)に向かう。

大斎原大鳥居

和歌山県田辺市本宮町本宮

浜の白さと海の美しさに思わず目を奪われる白良浜。どこか遠くの南国に来ているような、非日常感がある 。

白良浜周辺には、岩による見応えのある光景が続く。なかでもユニークなのが円月島(えんげつとう)。波の浸食でできた穴が中央を貫通しており、特に夕景の撮影に訪れる観光客が絶えない。

白良浜

和歌山県西牟婁郡白浜町

白い浜に白い魚 クエとしらすは和歌山の宝

熊野古道から白良浜(しららはま)までは車で1時間半弱。おりしもクエのシーズンで、毎年ここにクエ鍋を食べに来るという熱心な愛好家も多いという。実は筆者にとっては初めてのクエだったが、記憶に深く刻まれる濃厚な味わいに悶絶した。

クエはハタ科の高級魚で、体長1メートル超えも珍しくない。脂ののりがよいのにしつこさのない、品のある味わい。コラーゲンも豊富でとにかく滋味に溢れる白身魚だ。

脂ののったクエ鍋をいただけば、温かさが体の中で持続する。〆は雑炊にして一滴残らずいただいた。(風車)

活魚料理店「風車」ではこのクエ鍋のフルコースが心ゆくまでゆっくりと味わえる。しかも民宿でもあるため、食後そのまま部屋で寛げるとは至福の極み。

活魚・鍋料理・民宿 風車

和歌山県西牟婁郡白浜町2319- 6

0739-42-4498

和歌山の海の幸をさらに堪能するため、和歌山でしらすといえばここ、という絶大な知名度と信用を誇る「山利」へ。

江戸時代より守られてきたしらすの名店

創業は江戸時代後期、現在も鮮度重視で無添加の手作業を守る老舗だ。本社前には天日干しのちりめんしらすが並び、あたり一帯に幸せな香りが漂う(この香りだけで白いご飯がいただける)。釜揚げのしらすは、一尾一尾が大きくふっくらとしていて味わいも深く、和歌山のみならず全国の料理店がメニューに取り入れている。

ちりめんしらすの天日干しに入念に目を通す七代目・木村尚博氏。日々変わる天候や捕獲量に合わせ繊細な配慮を要する(山利)

山利

和歌山県和歌山市本脇543

https://yamari.info/home.html

@nanadaime_yamari

最後に訪れたのはその山利のしらすを贅沢に……というかこれでもか、と山盛りにしたしらすめしが名物の「中華そば 丸田屋(次郎丸店)」。漫画でしか見たことのないような姿の丼に、一同歓声を抑えきれなかった。

ラーメン店で山利のしらすが堪能できる。「山盛りしらすめし」は次郎丸店限定

腹に自信があれば、しらすめしと一緒に食べる濃厚な和歌山ラーメン(中華そば 丸田屋 次郎丸店)

送り雀をこちらから追いかけた和歌山の旅は、海の幸を巡る旅になった。食欲旺盛なオオカミは、自分だった。

中華そば 丸田屋 次郎丸店

和歌山県和歌山市次郎丸76-3

@chukasoba_marutaya

参考
『熊野本宮民話』(和歌山県民話の会)
『紀州有田民俗誌』笠松彬雄(郷土研究社)
『日本の民話紀の国篇』荊木淳己(燃焼社セレクト教養双書)
熊野本宮大社公式サイト https://www.hongutaisha.jp

連載「ニッポン47妖怪さんぽ」が2025年度グッドデザイン賞を受賞いたしました!

取材・文・造形 森井ユカ

立体造形家/キャラクターデザイナーポケモンカードゲームのイラストレーション、「コネコカップ」「ネゴ」のデザイン、粘土遊びセット『ねんDo!』のディレクションなど。著書多数。

撮影 原ヒデトシ
編集 中野桜子

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和歌山のおすすめホテル

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