空とつながる志──Joby万博リーダー小早康之が見たANAとの共創
ANAのチームメンバー約10名とともに、連日大阪・関西万博のデモフライトを支えているのが、空飛ぶクルマ「Joby S4」の機体を開発したJoby Aviation(以下、Joby)のチームメンバー約20名。ANAのメンバーからも「ヤスさん」「ヤス」と慕われ頼りにされているJobyのチームリーダー、小早康之さん(Joby Aviation 大阪・関西万博プロジェクトリーダー)に、これまでの経緯やデモフライトの感想、そして今後の展望をインタビューした。
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――大阪・関西万博の会場で一般来場者に向けたデモフライトを無事終えて、どんなお気持ちですか?
小早 Jobyを日本に持ってくるというのが私の任務でしたので、今はANAの皆さんと一緒に、Joby側の万博プロジェクトリーダーとしてやってきました。万博に参加すると正式表明した2023年2月から、2年半でやっとここまでたどり着いたという気持ちです。無事に飛べて、ほっとしています。私は機体をつくってくれたJoby全社員に、世界に披露するステージを提供しただけなのですが、やはりここまで来れたのは、チームあってこそです。日本の風景って、きれいじゃないですか。そこにJobyが飛ぶ。それを見るのは、本当に嬉しいですね。私は神戸や阪神間にも住んだことがあるんですが、関西に親しみを感じているメンバーが意外に多いみたいです。

――JobyとANAは共通した文化を持っているとお聞きしました。例えばどんなところが共通していますか?
小早 会社としてという部分と、日々仕事をさせていただいている皆さんとのお付き合いの部分、というふたつの側面があります。まず会社同士のことでいうと、お客様を乗せる上で安全第一という精神は共通ですね。エアタクシーとして高頻度で運航するためのノウハウはANAさんから学びたいですね。そしてANAさんのサービス、おもてなし精神の面でも、私たちが目指しているサービス、Jobyの文化と共通しています。Jobyは上場企業ですが、まだスタートアップのカルチャーが残っており、ANAさんも少人数で自分たちでどんどん物事を決めていくという環境で、今回の万博のプロジェクトもそうです。保理江さんもすごい人数の方たちを動かしているんですが、物事は少人数で判断していて、柔軟に対応してくださって、動きが早い。これも共通しています。こうしたフットワークの軽さは、我々にとっても重要なことです。

――今年は大阪・関西万博会場でお仕事をされていますが、ふだんはアメリカで勤務されているんですよね。Jobyで働く以前はどのようなお仕事だったのでしょうか?
小早 はい、アメリカで働いています。Jobyの本社は、CEOであるJoeBen Bevirtの地元、アメリカ・カリフォルニア州サンタクルーズにあります。シリコンバレーから車で45分ほど行ったところです。私はJobyに入社する以前は、もともとトヨタ自動車のエンジニアとして長年勤めていて、商品企画も担当していました。2014年からスタートアップ連携の目的でシリコンバレーに駐在し、2017年にトヨタ自動車がJobyに初めて投資した件にも関わっていました。その後、Jobyとトヨタ本社との協業が始まり、2社の関係が深まりました。「協業をマネージする人が欲しい」ということでJobyから声がかかり、2020年、コロナ禍が始まる少し前に転職を決意しました。その後、2社間の移動が全てストップしてしまい、オンライン会議ではコミュニケーションが上手く進まない中、私が間に入って両社の関係を維持したという経緯がありました。そのように、トヨタとの協業やコミュニケーションをマネージするというのが、私の任務でした。
Jobyがなぜトヨタ自動車ほどの大企業との協業を求めたかというと、飛行機の機体であれば、年間せいぜい数十機の生産販売ですが、Jobyとしては空飛ぶクルマを世界中に向けて展開していきたいと考えていました。CEOのビジョンだと、いずれ世界で年間数百機、そして長期的には数千機という規模で生産してビジネスを展開したいと考えていました。そうなると、航空機生産のノウハウというよりも、自動車生産のノウハウが必要なんじゃないかということで、トヨタ自動車の出資を受け入れたという経緯でした。
――Jobyのチームメンバーは、20代の優秀な方が多いそうですね。
小早 そうなんですよ。こんなに優秀な若い人がいるのかと驚くほど、みんなめちゃくちゃ優秀で……。私も一生懸命ついていく感じです。もちろんベテランもいますし、ちょうどいい融合だと思います。Jobyはチームワークがとてもいい会社で、みんなで「これを実現したい」という共通のミッションをもちながら、仕事をしっかりやっています。
取材・文 西元まり
撮影 西元譲二