感動の瞬間!空飛ぶクルマが大阪・関西万博で一般お披露目 デモフライトに大きな拍手
かつて近未来映画やアニメに登場した、空飛ぶクルマ。それが実際に毎日空をスイスイ飛ぶとしたら――。10月1日午前、大阪・関西万博会場の西ゲート奥にあるモビリティエクスペリエンス(EXPO Vertiport)で、空飛ぶクルマ「Joby S4」のデモンストレーションフライト(以下、デモフライト)が、一般来場者に向けて初公開された。

これは、アメリカのJoby Aviation(以下、Joby)が10年以上かけて独自開発し、実用化を目指す次世代エアモビリティ「eVTOL」(電動垂直離着陸機、通称“空飛ぶクルマ”)の最新試験機だ。将来的にアメリカでの安全認証を取得した後、ANAホールディングス(以下、ANAHD)と商用運航できれば、最高時速約320km、航続距離160km、パイロット1名を含む5名を乗せて新幹線と同様の速度で移動できるという、夢のエアタクシーとなる。大阪・関西万博の会場で行われた10月1日と2日のデモフライトの様子をレポートする。
電気で動くから離着陸はあっという間で、静かさが最大の特長
巨大なハンガー(格納庫)の扉が開き、中からゆっくりと機体が現れる。青い尾翼と白い機体にANAとJobyのロゴが鮮やかにデザインされた特別塗装機「Joby S4」は、全長約7.3m、翼幅約10.7mと、セスナ機ほどの大きさだ。

そこから、ゆっくりとバーティポートに移動。

後ろには遠く、オーストリアの世界的芸術家フンデルトヴァッサーが設計したユニークな大阪市のごみ焼却場「舞洲工場」の煙突が見える。

飛び立つ前にまず、プロペラなどの作動の最終チェック。「Joby S4」は、翼に5枚羽根のプロペラ6基を擁しており、プロペラが90度回転できる。

念入りなチェックの後、離陸を今か今かと待ちわびてカメラを構える大勢の来場者が固唾をのんで見守る中、突如プロペラが回り出す。「特に周回飛行中は、ヘリコプターなどに比べると、100倍以上も静かです」という保理江裕己(モビリティ事業創造部リードマネージャー)の解説を終えるや、地面からふわっと1メートルほど機体が浮いた!

かと思うと、そのまま垂直に上に。


そしてあっという間に、海のある上空へ向かって飛び立っていく。なんて早い!

そのまま、向こう側に見える神戸の山並みをバックに、豆粒ほどに小さく見えるまで周回。


「あれ、どこどこ!?」と一瞬見失ってしまう。その後、悠々とカーブを描きながら、またANAのロゴがはっきり見えるほどこちら側に戻ってくる。


ユニークなのは、機体の後ろ姿。飛んでいる形はまるで新種のトンボのよう。間近で見ると丸っこいフォルムなのに、真後ろは華奢なイメージだ。


そして音もなく視界から消えてしまって、大空を長く旋回した後、無事バーティポートに戻ってくる。その降りる時の静かさと言ったら……。

いったん地上1mほど浮いて、すっと地面に着陸。中にもし乗っていたなら、いつ着陸したのかわからないほどの静穏さではないだろうか。中からJoby S4操縦士のザックが満面の笑みで降りてきて、大勢の来場者の拍手と声援に包まれ、チームメンバーにハイタッチで迎えられる。

約15分のフライトを終えた機体は、充電と点検のため、Jobyのメンテナンスメンバーとともにまたハンガー(格納庫)へと戻っていく。

フェンスの外で来場者に向けて解説を行ったチームリーダーの保理江によれば、「万博会場のある夢洲から関空まで、わずか約10分で移動できます」 とのこと。
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「パイロットになるのが夢という10歳の息子に見せてあげたくて」と映像を撮影していた大阪市の30代女性は、「とにかく静かで速くて驚きました。一瞬でパッと飛び立ちましたよね。早く実用化してほしいです。いつか子どもたちと一緒に乗って、大きい窓から景色を見てみたい」と語った。
万博閉幕までほぼ毎日あるデモフライト
デモフライトは、天候や機体状況などにもよってスケジュールが変更される可能性もあるが、10月13日の万博閉幕までの期間、1日基本2回運航の予定(11時頃と14時頃。土曜は16時も予定)で、各回約10~15分間、海の上空約900フィート(約300メートル)の高さを飛ぶ。(ただし10月3日、4日、8日は運休)。

飛行中は大屋根リングや西ゲート前などでも見ることも可能だが、特長ある離着陸の様子を見るなら、やはりモビリティエクスペリエンスで。音の静かさを感じながら、浮くようにふわっと宙に浮く様子、そしてたちまち高速スピードで空高く飛ぶ様子をフェンス越しに見ることができる。
ちなみに、東ゲート南停留所から万博内外周バスeMoverに乗れば、モビリティエクスペリエンスのある西ゲート北ターミナル終点まで、約10分(1回券400円、1日券1000円)。東ゲートから混み合う会場内を歩くと40分ほどかかるので、時間短縮と疲労軽減のためには外周バスの利用がおススメだ。ふだん見えない万博会場の景色も楽しめる。
取材・動画 西元まり
撮影 西元譲二