ANAと奏でるハワイの風 世界的ピアニスト辻井伸行が紡ぐ音楽の物語

空の上で生まれた曲『青い翼にのって』
「皆さまに空の旅をより楽しんでいただけるよう心がけて、選曲させていただきました。クラシックの印象派の作品から、少しジャズの要素が入ったカスプーチンの曲、それから僕のオリジナル曲も。さまざまなジャンルの曲をお楽しみください」
ピアニストの辻井伸行さんはこう話すと、満面の笑みを浮かべてみせた。月替わりでさまざまな機内エンターテインメントを届けているANA。オーディオプログラムでは国際線で10月から、国内線で11月から辻井さんが選曲した名曲の数々を楽しめるスペシャルプログラム『辻井伸行セレクション〜青い翼にのって〜』が機内上映される。
今回は、ハワイで開催される音楽イベント『ANA ʻAha Mele』にも毎年参加するなど、ANAとのつながりも深い辻井さんのスペシャルインタビュー。

――演奏旅行のために飛行機に乗る機会も多いと思いますが、辻井さんご自身は、空の旅をどのように楽しんでいますか?
辻井 そうですね……本当に飛行機に乗ることが多いのですが、おいしい機内食はいつも楽しみにしています。それから、僕はお酒も嫌いではないので、食事とともにお酒を飲むことも楽しみの一つです。
――空の上で、音楽的な閃(ひらめ)きがあったりしますか?
辻井 あります。今回、セレクトしたなかにも入っていますが、空を飛んでいるようなイメージの曲『青い翼にのって』はまさに、ANAさんの飛行機に乗っているときに思い浮かんだものです。少し長めの空の旅でしたので、そのときはおそらく、ヨーロッパへのフライトの途中だったと思います」
――辻井さんはハワイの『ANA ʻAha Mele』にも毎年、参加されていますが、ハワイという場所にどんな印象をお持ちですか?
辻井 幼いときに両親と家族旅行をしたことがあります。海で遊んだりして、とても楽しかった思い出があります。また、僕はハワイの音楽も大好きで、小さいころはウクレレを遊びで弾いていたこともあるんです。海があって、気候もよくて、心底リラックスできる、本当に素晴らしい場所だと思います。『ANA ‘Aha Mele』で毎年、ハワイの空気を感じることができて、とても嬉しく思っているんです。
――これまでの『ANA ʻAha Mele』で、とくに印象に残っていることはなんですか?
辻井 楽しい思い出はたくさんあるのですが……『ANA ‘Aha Mele』ではウクレレのボディになるミロの木などの植樹活動を行っていますが、これに僕も参加させてもらったことがあります。生まれて初めての植樹というものを体験させてもらって。皆さんが懸命に何本も何本も木を植えているのを知り、自分も少しでも貢献できたらと、そんな気持ちで参加しました。
また、これは今年も実施しますが、ホノルルの地元小学生たちとの音楽教室も。子どもたちの即興のピアノ演奏を、僕がその場で再現する「コピーチャレンジ」というコーナーがあって。それがすごく盛り上がるんです。前回は途中で、子どもたちの音楽の先生まで参加されて。真剣に長い曲を弾かれて、憶えるのがホント、大変でした(笑)。なにより子どもたちが楽しんでくれたのが、僕も嬉しくて。今年も子どもたちに、音楽の楽しさを少しでも知ってもらいたいと思っています。
なにしろ、僕は自然豊かなところが好きなんです。だから、ハワイも本当に大好き。ハワイの風を感じ、波の音や小鳥の鳴き声を聴いているうちにインスピレーションが湧いてきたりもします。以前の『ANA ‘Aha Mele』のステージでは、ハワイをイメージした曲を即興演奏したこともありました。
子ども時代、クラシックかジャズかで迷ったことも
――いくつかのコンサートがある『ANA ʻAha Mele』ですが、イブニングコンサートでは辻井さんは「Blue Note Hawaii」のステージでも演奏するんですよね?
辻井 そうなんです。じつは僕、幼いころからジャズも大好きだったんです。その昔はクラシックかジャズか、どちらの道に進もうか迷ったこともあったくらい。ですから、Blue Noteで弾けるというのは、僕にとってはとても新鮮で、光栄なことなんです。前回も演奏させていただいたんですが、ふだんのコンサートよりもお客様との距離が近いので。皆さんが楽しんでくださっているのがよくわかって、弾いている僕も楽しくなるんです。皆さんから、顔が見えなくなるぐらいたくさんのレイを首に掛けていただいたのも、楽しい思い出です。 好きなジャズのナンバー? う〜ん、たくさんありすぎて、難しい質問ですね〜(笑)。強(し)いて言えば、ビル・エヴァンスの演奏は好きで、よく聴いています。
――ハワイの料理はお好きですか?
辻井 大好きです。おいしいもの、たくさんありますが、一つ挙げるとしたらロコモコでしょうか。以前、『ANA ‘Aha Mele』で滞在したとき、ホテルの朝食メニューにロコモコがあって。おいしくて、毎日のようにオーダーしていたら、ホテルのスタッフさんに「また食べるの?」なんて驚かれてしまって(笑)。でも、本当に毎日食べたくなるほどおいしかったんです。
――辻井さんはいつも「チーム」を意識していると聞きました。それはどんな思いからですか?
辻井 はい、それはやはり、僕の音楽を届けるためには、多くの皆さんの支えが必要なんだと実感しているからなんです。僕はピアノをソロで弾くことも多いんですが、そのようなコンサートであっても、裏方の人たちが一生懸命協力してくださって、初めて成立する。もちろんオーケストラや、ほかのミュージシャンの方たちとのステージでは、皆で力を合わせます。今回のANAのオーディオプログラムや『ANA ‘Aha Mele』も、ANAの皆さんとチームとして取り組んでいます。
――舞台に立つのは辻井さんお一人だとしても、多くの人の協力は欠かせないということですね?
辻井 そうです。ピアノを弾く僕、スタッフの皆さん、そしてなにより、その会場に足を運んで僕の曲を聴いてくださるお客様、すべてが一つのチームとなって、一つのコンサートというのは作られると、そう思っているんです。僕にとっては、そのようなたくさんの出会いも『ANA ‘Aha Mele』の楽しみの一つなんです。 今年の『ANA ‘Aha Mele』も、皆さまと一緒に作り上げたい、素晴らしいコンサートにしたい、そんなふうに思っています。

ANA ‘Aha Mele
2019年から続く、音楽や文化交流及び環境保全を目的としたイベント。「‘Aha Mele」とは、ハワイの言葉で「音楽会」のこと。地元アーティストとの共演、音楽を通してハワイの人々とのつながりを紡ぎ、文化や環境を守っていきたいというANAの想いを込め、地元に根付いたイベントとなることを目指している。今年も辻井さんを主な出演者として、11月19~22日にホノルル市で開催される。
Tsujii Nobuyuki
2009年6月、「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」で日本人として初優勝。以来、世界的なピアニストとして活躍。ニューヨークのカーネギーホールの主催公演やイギリス最大の音楽祭「BBC プロムス」などに出演し大成功を収めたほか、ウィーン楽友協会やベルリン・フィルハーモニー、パリのシャンゼリゼ劇場など世界の著名なホールで例年コンサートを開催している。
Norie Green 「風と音楽に包まれながら“アロハ”とつながる」

Norie Green ノリエ・グリーン
日本テレビ『ズームイン!! 朝!』のキャスターなどで経験を積み、2008年に子連れハワイ留学。ハワイ大学カピオラニ校卒業。現在は、全米唯一の24時間日本語放送局、KZOOラジオのプロデューサー兼アナウンサー。『Norie Green のAloha from KZOO』『ようこそクラシックの翼へ~ Presented by ANA』などの番組のパーソナリティを務める。
『ANA ‘Aha Mele』の開催は今年で4回目。
世界的ピアニストの辻井伸行さんをハワイへお迎えするのも4度目となります。ダイヤモンドヘッドを望み、ヤシの木がそびえ、海からの風が吹きぬけるワイキキシェルの会場後方には、芝生席もあり、小さな子どもたちを連れたローカルファミリーがピクニック気分で、本物のクラシック音楽に触れることができます。

「毎年このイベントのために日本からハワイに来ています」「子どもたちに辻井さんのピアノを生で聴かせてあげられるチャンス。最高のコンサートです!」「辻井さんの演奏に男泣き、涙が止まらなかった。ANAさん、感動をありがとう!」――KZOOラジオの番組に次々と届く、そんなお客様たちからのメッセージに、熱心に耳を傾けられているのが、ANAの井上慎一社長です。井上社長は「ハワイの文化を守るイベントでなければ、地元の人たちが喜んでくれるイベントでなければ」と、ご自身が泥だらけになりながら植樹にも参加されています。『ANA ‘Aha Mele』が続けている植樹は、ミロの木やハラ、ウィリウィリといったハワイの固有木を取り扱っています。それらの固有種は、地下に独特の根を張り、しっかりと大地を支えることで、雨が多く降った時に地滑りや水害を防いでくれます。持続可能な環境を守るための活動です。

毎回、KZOO ラジオの『ANA Sky Radio』にご出演してくださる井上社長と。
辻井伸行さんは、インタビューで「音楽に国境も人種も関係ない。お互いの言葉がわからなくても、音楽でわかりあえる。ハワイでは、風を感じて、鳥のさえずりを聴きながら演奏します」とお話ししてくださいました。
『ANA ‘Aha Mele』の目的は、音楽を通じてハワイとつながり、同時にハワイの文化や環境を守ること。井上社長やANAスタッフの皆さん、そして辻井さんの想いが形になり、大きな温かいアロハになり、感動が生まれる。それが『ANA ‘Aha Mele』だと思うのです。今年もANAがブルーの翼に乗せてお届けする『ANA ‘Aha Mele』へ……皆さまの「ご搭乗」を心よりお待ちしています!

『ANA ‘Aha Mele 2025』
2025年11月19日(水)~11月22日(土)ハワイのホノルルで行われます。
写真 yOU 、taichi(ハワイ分)
取材・文 仲本剛
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