ノーベル賞晩餐会でも注目 スウェーデンのスイーツ習慣がカフェ界隈に与えるインパクト
インテリアやテキスタイルをはじめ、男女平等、福祉の充実などの先進性でも憧れを集めるスウェーデン。この国で特にこよなく愛されているのが、温かい飲み物とスイーツを嗜む「フィーカ」の習慣なのだという。世界にその名を轟かせるノーベル賞に関連する場所でも、その影響は顕著だ。気になるその関係性を、パティシエたちの話とともにひもといていく。
世界的な権威ある賞とフィーカが持つ多彩な関係
ノーベル賞にまつわるさまざまなものもまた、フィーカと深い関わりを持つ。例えば、受賞記念のディナーで提供されるスイーツとその担当パティシエには毎年多くの関心が。晩餐会を運営する「スタッツヒュースシェッラレン」では、前年のデザートがその後約一年メニューに名を連ねる。
Stadshuskällaren
Hantverkargatan 1, Stockholm
ノーベル博物館内のカフェ名物、通称“ノーベルアイス”もお忘れなく。過去の晩餐会で出されていたアイスクリームに着想を得たもので、見学後のフィーカのお供として不動の人気を誇るそう。
Nobel Prize Museum
Börshuset, Stortorget 2, Old Town, Stockholm
ストックホルム郊外に位置するかつてのダイナマイト工場「ヴィンテルウィーケン」は、立派な煉瓦造りの建物が改装され、地元の人々がフィーカやバンケットを楽しめるカフェとして親しまれている。
Winterviken
Vinterviksvägen 60, Stockholm
「コーメルクト」の創業パティシエであるダニエルさんは2014〜19年の計6回、晩餐会のデザートを担当した実力派。「担当パティシエに選ばれるのは大変な栄誉なので、オファーをいただいたときはうれしかったです。その年の料理担当と話し合い、テーマをすり合わせながらイメージを形に。最初の年につくったデザートの評判がよく、晩餐会終了後に自分の店でも出してみたら100人以上が並んでくれて。この賞の影響力を実感しました」
K-märkt
Linnégatan 87F, Stockholm
慣れ親しんだオーソドックスなフィーカが大切にされる傍ら、モダンで洗練された独創性がカフェシーンを席巻しつつある流れも。2024年12月に開催された最新の晩餐会でデザートを担当したのが、「ソッケルスッケル」のパティシエであるフリーダさんだ。偶然にも、彼女とタッグを組んだシェフも女性であり、シェフとパティシエの両方に女性が選ばれるのは史上初の出来事だったのだという。ジェンダー平等が進んでいるスウェーデンでも先駆的な存在として、例年以上の期待と注目を集めた。
名門パティスリーで同僚関係にあったフリーダさんとベイカーのベドロスさんが「ソッケルスッケル」をオープンさせたのは「従来のフィーカにイノベーティブな新風を吹かせたい」という思いから。「フィーカは生まれてから死ぬまで、多い日は一日に三度ほども触れ合う時間で、お葬式にさえもあるんです!これほど根強い文化に対し、どのようにして今まで見たことがないようなものをつくれるのか、挑戦を続けています」
Socker Sucker
Drottninggatan 93, Stockholm
案内人 ヴェントゥラ愛
写真 伊達直人
コーディネーション 明知直子
取材・文・編集 山下美咲