世界中から人が訪れるパリの書店 「ITが進化しても紙の本はなくならない」
フランスには“アール・ド・ヴィーヴル”という考えが根付く。直訳すると「アートな生活」だが、日常のあちこちに美を見出し豊かに暮らそう、というフランス人の生活美学がにじみ出た言葉である。
アートディレクターである細山田夫妻と歩いたパリは、まさにアートやデザインが飾らずとも溢れ、パリローカルの思考や生活を映していた。
「ボンジュール・ジャコブ」の壁一面に展示される世界中から集められた雑誌
細山田光宣(左)
アートディレクター
東京・渋谷区富ヶ谷にある細山田デザイン事務所主宰。料理本や児童書、専門書まで、様々な書籍や雑誌を中心にデザインしている。著書に『デザイン事務所が作った「悩まない」配色の基本』(翔泳社)、『誰も教えてくれないデザインの基本』(エクスナレッジ)などがある。また同所にて活版とリソグラフの製作スタジオLetterpressLettersも主宰する。
細山田亜弥(右)
フランス系企業に勤務しパリに5年駐在する。現在はLetterpressLettersのブランドとカフェを運営。
「本はアート」 作り手 受け手の感覚が紙の価値を保つ
パリのアートブックストアは、コンセプト、ブランド力をもって、世界中の本を厳選しギャラリーのような店作りをしている。そのセレクト基準は「有名」や「売れている」という観点ではないため、ここでしか出会えない存在感あるものばかり。
特にサン・マルタン運河周辺はパリの中心へと向かう場所に位置するという意味で、ビジネスとしても成功していると言える。本のセレクトはもちろん、憩いの場として、人々を惹き寄せ愛されているのだ。
ARTAZART(アルタザール)
冒頭の赤い壁が印象的なストア。扉を開けると雑誌、デザイン書、アートブック、写真集、絵本、若いアーティストの作品やユニークな雑貨が並ぶ。20年以上運河前の一等地で愛されながら、この外観のデザインはまったく古びない。充実の本のセレクトは何時間いても飽きない楽しさ。
83 quai de Valmy 75010 Paris
驚いたことに、アルタザールとボンジュール・ジャコブの社員に話を聞くと、口々にまったく同じことを言った。
「どんなにITが進化しデジタルが便利になっても、紙の本は単なる情報ではないため、その価値が危ぶまれることはない。事実、インテリアやライフスタイルの一つとして、世界中から求めに来る人がいます」。そういう感覚の人々により紙は愛され、作り手も新しいデザインを生み出す。
Bonjour. Jacob Canal Saint Martin(ボンジュール・ジャコブ カナル・サン・マルタン)
コンセプトはスペシャルコーヒーとケーキとインディペンデントマガジン。2年前にオープンし、すでに3店舗目も完成する。外観や店のデザインはオーナーJacobさんが自ら考える。マガジンセレクトの基準は、自分が読んで面白いもの、そしてこのエリアのアーティーな人に気に入ってもらえるものであること。
28 Rue Yves Toudic 75010 Paris
Quintal Atelier(キンタル・アトリエ)
日本発の印刷機「リソグラフ」(「プリントゴッコ」を作った会社が発明した技術)を本格的に行うアトリエ。この印刷に魅せられたオスカーさんは若きアーティストの作品を印刷、販売し、アートスクールのインターンも受け入れている。
13 Rue d’Eupatoria 75020P Paris
案内人・語り 細山田光宣
案内人・コーディネート 細山田亜弥
本文デザイン 千本聡(細山田デザイン事務所)
写真 神戸シュン
取材・文・編集 中野桜子
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