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ミュンヘンから届く世界最古のビール  おいしさの秘訣は産学連携で進化する歴史

ミュンヘンから届く世界最古のビール  おいしさの秘訣は産学連携で進化する歴史

TRAVEL 2025.07 ミュンヘン特集

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世界最古のビール醸造所、ヴァイエンシュテファン。その始まりは今から約1000年前。この地にあった修道院で、修道士たちが自分たちのためにビールを醸造していたのが、そのルーツ。「え?修道院でビール?」と驚く人もいるかもしれない。しかし、修道士にとって断食期間中、飲み物の摂取は許されていた。そこで生まれたのが栄養価の高いビール。つまり、断食しながらビールを飲む…空きっ腹にビール!これがまた、きっといい感じに回ったことでしょうね。

最古といえども、決して古いだけの醸造所ではない。ヴァイエンシュテファンは、むしろ最新技術の集積地でもある。その秘密は、隣接するミュンヘン工科大学との協力体制。特にライフサイエンス学科と醸造学科の存在が大きく、ビールの品質向上だけでなく、気候変動による作物への影響、育成や収穫時期の変化まで研究対象となっている。環境と醸造技術、企業と大学とが連携することで、進化し続けるビールがここで生まれている。まさに“ビール業界のシリコンバレー”?

大学との協業の成果が詰まったヴァイエンシュテファンのビールは、約60か国に輸出されている。もちろん、日本でも手に入る。見つけたらぜひ飲んで、1000年の歴史を味わってみてほしい。

世界各国で均一の味を提供するために、ヴァイエンシュテファンがこだわるのが貯蔵期間。多くの大手ビールメーカーが2週間ほどの貯蔵期間で出荷するのに対し、ここでは5〜6週間かけて理想的な味わいを追求している。「どの国で飲んでも同じ味」、それを実現するのもミュンヘン工科大学との協業の成果。実際に醸造所を訪れると、そこに広がっていたのは、いわゆる“ビール工場”のイメージとはかけ離れた光景。むしろ化学工場のような精密さを感じさせる空間。世界初の技術で醸造と貯蔵をひとつのタンクで行うシステムほか、最新のマシンが並び、未来のビール作りがここで日々進化している。

こうした革新の先に生まれるヴァイエンシュテファンのビール。その最終チェックを担うのが、ビール醸造マイスターのトビアス・ツォロ氏だ。彼に「美味しいビールとは?」と尋ねると、「また飲みたくなるビール。それに尽きる」。そう、細かいことは抜き!美味しければ、それでいいのだ。1000年の歴史と革新、それが詰まった一杯を、ぜひ味わってみてほしい。

取材・文 山下マヌー
写真 Dice.M.P.

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