食べ物も街もアジアが混沌 年間3000万人が訪れるマレーシアの魅力
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ツインタワーとしては世界一高いペトロナスツインタワー(452m)、超高層ビルとしては世界で二番目に高いムルデカビル(679 m)、マレーシアの超高層ビルで二番目の高さとなるエクスチェンジ106(445m)など、話題の高層ビルが立ち並ぶクアラルンプール(KL)。一見すると整然と高層ビルが立ち並ぶ人工都市のようにも思える。
ところがいまだアジアの混沌と、良い意味での猥雑さが残っているのもまたKL。実際、この国に年間3000万人近い外国人が訪れてくる理由もそこにある。
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KLの町中で味わう「アジアの混沌」とは、中華系、インド系、マレー系、欧米系など多様な文化や人々、そして活気溢れる雰囲気が織り成す魅力的な体験。アジア各地からの移民や観光客が集まるKLはある意味、東京以上に国際都市であり、多様化が進んだ都市であり独自の魅力を生み出している。
食事を楽しみたいならアジアの代表的なスタイルの屋台街に行くのがいい。高層ビルを仰ぎ、生ぬるいアジア独特のヌメッとした風に当たりながら飲むビールとアジアンな味付けの料理が「アジアに来た!」ことを実感させる。
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アジアの混沌といえば、偽物を販売する店もここでは健在だ。チャイナタウンには本物なら数百万円する時計から数十万円のブランドのアパレルやバックのコピー品が溢れている。決して褒められたことではないが、未だにその手の店が存在し観光客と駆け引きをしている姿を見ると、次々とアジアからアジアらしさがなくなる中、「古き良きアジア」の光景にちょっと嬉しくなったりする。
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日本人にとって最も異国感を感じるのは、おそらくインド人街。エリアに足を踏み入れた瞬間、もうそこは何もかもインド。原色の色使い、各ショップから大音量で流れるボリウッドサウンド、漂う独特の香り…これらが重なり合い、今までマレーシアだった場所を一瞬にしてインドへと変えてしまう。これはマレーシアのほかにもう一カ国追加で旅をしたような、なんだか得した気分にさせてくれる。
そんな“ほぼインド”の中で食べるロティやドーサといったインド料理の味がたまらないのだ。
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クアラルンプールのミックスカルチャーは、異なる民族や文化が混ざり合い、独自の文化やアイデンティティを刺激しながら高め合い、生み出している。さまざまな民族が共存している多民族国家であるからこそ、独自のミックスカルチャーが形成されていく。そこに「多様性」などという言葉を意識するまでもなく、当たり前に存在している。異なる文化が交流し合いながら共存し、多様な文化や人々が共に暮らすことで日常から生まれる新しいアイデンティティや文化を羨ましく思う。
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写真・文 尾嶝太文/山下マヌー