ラナイ島のサステナブル活動拠点を目指すリゾート〜島いっぱいのALOHA-4
Dole社が購入して以降約100年の間、島民以外の立ち入りを制限。そのため他のハワイの島々のように開発されることのなかったラナイ島。2012年、そのラナイ島の98%を購入、島のサステナブルな活動を後押ししているのがオラクルの創業者ラリー・エリソン氏。すでにあった海側と山側のフォーシーズンズ リゾートを大幅にリニューアル。ホテルでのサステナブルな活動を進めつつ、島との共存を図っている。「ハワイ最後の楽園」「ハワイ好きが最後に行き着く島」ともいわれるラナイ島でのリゾートのあり方をフォーシーズンズリゾート ラナイのGM、アヴィ氏が語る。
「これまで9カ国で働いた後、2022年からこちらに来ました。それまでハワイには一度も来たことがありませんが、ラナイ島はこれまでのどこの場所よりもユニークだということはすぐにわかりました。自然豊かなこの島に暮らす3200人の人々と運命共同体であるかのようにすら感じてしまいます。なので島をちゃんと守っていかなくてはならないという思いを強く感じています」。
あなたが新しく始めたサステナブルの試みは?また以前からあったユニークな取組はありますか?
「島を購入した時点でラリー・エリソン氏は、島の自然には触らない、地形を変えない、建物を増やさないなど確固たるルールを決めて運営していました。その後私が来てから始めた事は、全てオーガニックにするということ。それまで使っていた防虫剤などケミカルなものを止め、100%オーガニックなものへと変えました。そうすることによって、海が綺麗になりサンゴが蘇るという良い循環が始まります。
また野鳥のフィーディングステーションを設けたことで、鳥たちが戻ってきました。それらの活動が認められ、マウイヌイリソース(環境の取り組みの審査をする団体)から、ホテルの環境に対するサステナブルな取り組みに対しての賞を受賞。これはフォーシーズンズ ホテルズ アンド リゾーツグループにとっては画期的なこと。自分たちのチームが世界全体のチームに対して目指す目標となったのです」。
以前と比べ宿泊の料金が随分高くなっていますが、そういった活動に使っているためでしょうか?
「ここにくるゲストの多くが、『意味のある本物の旅』を最大の目的としています。リゾートとして本物を目指しているのは当然、サステナブルについても上辺だけではなく島の環境をどうやったら更により良いものへと繋げていけるのかを、深く追求しています。追求すればするほどお金がかかるのは事実です。
たとえばレストラン。お客様が残したものをAIのカメラで読み取り、なにがどれだけ残ったか、それによりどれだけの無駄なCO2が地球に排出されたのかということを計算。それをレポートにまとめてシェフやキッチンのスタッフと共有。次のメニュー作りや食材選びに活かすということをしています。
また島は殆どのものが外から運ばれてきます。それをすべてローカル産に変えるというのは大変なこと。だけど絶対にやるべき。それをやることでローカルをサポートすることにもなり、島全体でサステナブルの循環が成立する。
リゾートで使う野菜はほぼ全て、ラリー氏が作ったセンセイファームというオーガニックファームで育てています。初期投資としてはコストがかかりますが、将来的にはコストも下がり、環境のためにも外から運んでくるよりずっと良いのです。
野菜を育て提供するという、今までのラナイ島では不可能だったことをできるようにする。つまり大きく深くサステナブルに関わることを行っているので、それだけお金もかかることでもあるということがわかってもらえると思います。
「各部屋にYettiのタンブラーをギフトとして置いています。それもお金がかかることですが、リゾート内で使うのはもちろん、持ち帰って使ってもらうことでいつでもサステナブルを意識することができ、続いていくのです。そうすることでゲストといつでも繋がることができるのと同時に、それぞれの場所に帰った後も環境への意識を感じてもらえるようになると考えています。そのことが心や身体のウエルネスにも繋がるのではないでしょうか。
「ラナイ島はなんとなく選んでる場所ではないですよね。世界に何百とある島の中から『ここに来たい』と決めてくる場所です。選んでくる場所ということは、選ばれしゲストだということでもあります。
そもそもこの島にはサステナブルな暮らしが根付いているし、住民の方々が大切に守ってきた。島の中にはユニークな風景や自然が存在している。私達はそれを引き続き、受け継いでいくということ。ゲストの方々も、サステナブルが根付いた島だということを理解しているし、そういう人々に愛されている島。
太平洋の真ん中に浮かぶそんなマジックな島、それがラナイ島なのです。
撮影/内田恒
取材・文/山下マヌー