職人技が光る!クリスマス専門店でメルヘン気分に浸る(ローテンブルク)〜ドイツの優しさに触れる旅vol.1
ドイツでいちばん大切な季節、それがクリスマス
12月といえば、ドイツでは1年でいちばん大切なクリスマスの季節だ。アドヴェントカレンダーを開けながらお菓子を焼き、大切な人へのギフトを準備する。そんな伝統的なクリスマスのしきたりを守り続けているドイツに移住した元アナウンサーの伊東楓さん。現在、画家として活動する彼女の“気づき”を通して、ドイツのクリスマスを象徴する2大企業を訪問。異国での生活で見つけたドイツの素敵なところとはーーー
「ドイツ人は、クリスマスにかける熱量がすごいんです! クリスマスマーケットで飲んだグリューワインは温かくて美味しかったな」(案内人・伊東楓)
市庁舎のあるマルクト広場から程近く、ローテンブルクの旧市街地でもいちばん賑やかな通りに建つ「ケーテ・ウォルファルト」本店。旧東ドイツ出身の一家は1977年にローテンブルクに移り、ヨーロッパ初、通年営業のクリスマス用品専門店ショップをオープンした。
「商品は2万個ほどで、その8割はドイツをはじめ、スロバキアなどのヨーロッパの工房で生産されたもの。自社デザインのグッズや有名ブランドの商品も多く揃えています」
そう語るのは、ケーテ・ウォルファルト本店「クリスマスビレッジ」で広報を担当するフェリシタス・ホップナーさん。三角屋根のメルヘンチックな建物の中に入ると、所狭しと可愛らしい商品が陳列されている。「中は意外に広いんですよ」という言葉どおり、5メートル近い大きなツリーが目に飛び込んできた。
「クリスマスムードを一年中感じられるような空間づくりを心がけています。観光客の方々は、クリスマスシーズンは自国で過ごすのでドイツにはいられません。そのため、クリスマスのオフシーズンにここに来て、ドイツのクリスマスの雰囲気を味わうそうです」
くるみ割り人形やロウソクの炎でプロペラが回るピラミッドなどの伝統的な民芸品の数々。なかには、高価な商品もあるが、その一つひとつが手作りだと聞くと納得する。
創業者の孫で、会社の後継者でもある琢磨・ウォルファルトさんは、手仕事を支える職人の数と技術を維持する努力は不可欠だと語った。
「100人以上の社員がいる大きな会社との取引もありますが、職人さんが2人くらいの工房も少なくない。年齢的にリタイアする方も増えています。職人さんの技術を受け継ぐ後継者を探したり、小さい工房に定期的に注文したり。手づくり商品を維持していくための取り組みをしていくことは、常に私たちの課題です」
また、環境先進国といわれるドイツは〝サステナブル〟が根づく地。
「高価なくるみ割り人形でも、よいものを買えば、自分の子や孫へと長く受け継がれていくのではないでしょうか。だからこそ、なるべく手作りのものを残したい」
ドイツ人の父と日本人の母の間に生まれた琢磨さん。クリスマスは“家族と過ごす”ドイツ流のしきたりで育ったという。
「僕ら3人きょうだい、それぞれパートナーはいますが、クリスマスは実家で家族と食事をします。ツリーを飾り、母と姉が鴨を焼き、兄はサイドディッシュ、僕はデザートと、家族みんなで料理を作って、ワイワイやりながら食べるのが恒例ですね(笑)」
1964年創業以来、三代続くウォルファルト家が大切に守り続けてきたことは?
「人にプレゼントする楽しさだったり、相手に喜んでもらって嬉しいと感じることだったり、そういう気持ちを大切にすることです。祖母のケーテがこの会社を創業したときのコンセプトを守りつつ、変わっていく時代に合わせてチャレンジすることも大事だと思っています」
職人技が光るハンドメイド工芸品
伊東楓さんが選んだのは、お香の煙を口から出す「お香人形」、プロペラの付いたピラミッド、クリスマスツリーに飾るオーナメントの数々。「ガラス製のオーナメントは繊細でドイツっぽいです」
小さい人形の一つひとつが職人さんの手作りによるもの。
Käthe Wohlfahrt
1964年の春、創業者のウィルヘルム・ウォルファルトは妻のケーテと共にケーテ・ウォルファルトの母体となる会社を設立。世界的に有名なローテンブルクの本社「クリスマスビレッジ」をはじめ、ベルリン、ハイデルベルクなどの国内店舗ほか、フランスとベルギーにクリスマス専門ショップを出店している。
Herrngasse 1, D-91541 Rothenburg ob der Tauber, Germany
案内人・伊東楓
1993年生まれ、富山県出身。アナウンサーとして活躍後、絵本作家を目指し、2021年2月にTBSテレビを退社。同年3月、初絵詩集『唯一の月』(光文社)を上梓。単身ドイツへ移住して1年、現在は画家として活動中。
写真:yOU コーディネート:ケン若月 取材・文・編集:服部広子