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100年後の東京にも牧場を 地域に幸せを広げる酪農一家の挑戦

100年後の東京にも牧場を 地域に幸せを広げる酪農一家の挑戦

TRAVEL 2024.08  東京特集

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ミシュランの星の数をはじめ、そのクオリティと多様性で「食の都」とまでいわれるようになった東京。最先端のレストランが続々と都心に生まれる中で見過ごされがちだが、東京の食の底力は、「食の伝統」の豊かな進化にこそある。

メトロポリタンでありながらも、一地方都市でもある東京の重層的な食文化を老舗、問屋、都市農家、仲卸の4つの「変わらない東京」にスポットを当てて繙(ひもと)く。

新宿から電車で約1時間。京王高尾線山田駅から徒歩10分かからない場所に、磯沼ミルクファームはある。

かつて東京は酪農の中心地だった

日本で酪農が始まったのは明治維新以降。その中心地は東京だったという。現在も都内に40戸の酪農家がいるが、7品種もの牛を飼い、家畜福祉に配慮した飼育方法や循環型農業に取り組み、乳製品の製造・販売までを一貫して行う磯沼ミルクファームは唯一無二。都市近郊の牧場だからできることを模索し、挑戦し続けている。

「もともとは江戸時代から続く野菜農家で、私は15代目。祖父が酪農業を始め、毎週乳搾り体験教室を開くなど、現在のように誰でも自由に出入りできるオープンファームになったのは父の代から。牧場は地域の資源であり、酪農の豊かさや楽しさをより多くの人と共有することで、地域に不可欠な存在になれるというのが父の考えでした」と磯沼杏さんは言う。

大都市のそばに酪農がある豊かさを発信

「牛も人も幸せな牧場」を目指した父の哲学と理念を継承し、100年後の東京に牧場を繋いでいきたいと、2022年には新たに「TOKYO FARM VILLAGE」をオープンした。

「コロナ禍、牧場を訪れた人たちが笑顔になっている姿を見て、都市に牧場があることの意義を改めて感じました。うちと地元で200年続く農家の中西ファーム、地域で人気の洋菓子店を手がけるバーゼルが三位一体となって、ここを拠点に地元の農産物に付加価値をつけて発信し、地域をますます盛り上げていきたいと思っています」

中西ファームからは毎日新鮮な野菜が届き、ミルクスタンドでは、30年愛される磯沼ミルクファームの無添加ジャージーヨーグルトを販売。多品種のミルクをブレンドした「みるくの黄金律ソフトクリーム」¥480も人気だ。カフェレストラン「FARM BASEL」では、中西ファームの野菜や磯沼ミルクファームのミルクを使った料理やスイーツが楽しめる。人気は自家製キッシュ¥1,750(数量限定)、牛ポテ¥2,000。

磯沼ミルクファーム

写真 長野陽一
取材・文・構成 和田紀子

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