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東京タワーから立ち寄りたい 96歳のグルメな店主が営むうなぎの老舗

東京タワーから立ち寄りたい 96歳のグルメな店主が営むうなぎの老舗

TRAVEL 2024.08  東京特集

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ミシュランの星の数をはじめ、そのクオリティと多様性で「食の都」とまでいわれるようになった東京。最先端のレストランが続々と都心に生まれる中で見過ごされがちだが、東京の食の底力は、「食の伝統」の豊かな進化にこそある。メトロポリタンでありながらも、一地方都市でもある東京の重層的な食文化を老舗、問屋、都市農家、仲卸の4つの「変わらない東京」にスポットを当てて繙(ひもと)く。

220年以上続くうなぎの老舗

東京のシンボルである東京タワーのすぐそば。桜田通りに面して店を構える「野田岩」は、江戸後期の寛政年間(1789~1801年)に創業。初代が現在の飯倉に店を開いた当時はすぐ近くに水天宮があり、日本橋蛎殻町に移転する明治初期まで花街や芝居小屋がいくつもあり、賑やかな界隈だったという。

96歳になる今も現役の5代目

「江戸の四大食のなかで屋台をやらなかったのはうなぎだけ。うなぎは江戸っ子の最大のご馳走だったんです」という5代目の金本兼次郎さん。96歳になる現在も一職人として日々焼き場に立ち、江戸前の技術や家宝ともいえるタレを守り続ける一方で、革新的な取り組みを続けてきた伝説のうなぎ職人だ。

「うちは、創業以来変わらぬ味では決してありません。まず、そもそもうなぎが違う。『野田岩』といえば天然ものでしたが、現在は天然ものと遜色のない質の高い養殖ものも使っています。タレも、代々継ぎ足しながら大切に受け継いではいますが、時代に合わせて調合を変えているんです」

うなぎにワインやキャビアを合わせて

最大の転機は、40代でワインを覚えたことだという。
「フランス料理を食べ歩くようになり、フランスにも行くようになって、そこから
志ら焼にキャビアを添えてみたり、ワインを提供するようになったんです」
さらには真空パックのうなぎを販売したり、百貨店やパリにも出店したり。伝統を守るということは、革新し続けるということをまさに体現している。

野田岩 麻布飯倉本店

写真 長野陽一
取材・文 和田紀子

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