世界中を船旅し、定住したのは生口島。サムさんとアイランドホッピングへ
世界を船旅してきたサムさん一家が定住した島。風向きで楽しむ気ままなヨット旅で、 アイランドホッピングへ。
瀬戸内海でヨットで遊べるサービスを運営している鬼崎さんの仲間を訪ねました。サムさんのヨットは手作り。海を熟知しています。「父はニュージーランド人、母は日本人で、僕の両親は船で旅する冒険家でした。3兄弟は常に両親と旅をして育ち、実家は”船”」。これまで定住することがなかったサムさん一家が、5年ほど前からここに住んでいるという。「色々なところを見てきたけど、これほど安全で美しい場所はない。島の人の優しさにも感動して、今はここを気に入っています」と言うサムさん。
波の穏やかな瀬戸内海だからこそ、ゆらりゆらりと気ままなヨット旅ができるそう。その日の風向きに任せて、行き先は変わります。いくつもの無人島や住人のほぼいない島々に降り立つことができるのも、ヨットならでは。普通の船では桟橋のない島には船体を寄せにくく、気軽に降り 立つことはできないからです。ここでは、子どもも大人も、貴重な無人島ツアーを楽しむことができます。また、サンセット、海水浴など季節によって楽しみ方は多様。好きな食べ物や飲み物を持って景色を楽しむもよし。海との距離が近づくはず。
使わなくなったヨットの帆でデザインしたバッグ
サムさんの取り組みのひとつ、リユースグッズ作り。ひ とつひとつが違ったバッグは、なんと使わなくなったセイル(ヨットの帆)をリメイクしたもの。これは、シーズンオフの冬のあいだの仕事だそう。「セイルで何か作れないかと。風や潮、水に強い生地なので、セイルとしては古くなっても、まだまだ頑丈。海に持っていくのはもちろん、マイバッグが主流の今、普段使いしてもらえたら嬉しいです」。
無人島でのゴミ拾いでポジティブの連鎖を
無人島に着くと、おもむろにゴミを拾うサムさん。一緒にいた全員も自ずとゴミ拾いを始めます。「ここは無人島のビーチがたくさんあって、どこもすごく美しい。それなのにゴミがたくさん落ちていて、勿体(もったい)ないと思ったのがきっかけ。日本は、プラスチックを 大量に使う文化があるでしょ。文化を変えるのは難しいけれど、拾った人は、これは誰かのだったんだな、と〝人間のものだ”って、気づけると思うんです。それで次に買うときに一人一人少しずつ気持ちが変わると思って。誰が捨てた?誰が回収する?というややこしい話でなく、僕の船でしか無人島に行けない、ということで使命感を感じたんだよね。
お客さんはもちろん、学生や、次の世代に伝えたい。そしてこれが船に乗るきっかけになり、海や外遊びが好きな若者が増えれば。将来は、ゴミ専用の収集船みたいなものを作りたい。ゴミ拾いって、日本だと面倒くさい、汚い、というネガティブなイメージだと思うんですが、やればもっとよくなる、楽しくなるというポジティブ思考を作ることができれば嬉しいです。その気持ちよさは、お金では買えない。ゴミが全くないさらに美しい景色は、日本の島の価値を上げると思うんです」。
ヨットに揺られ、日常を忘れてしまうひととき。会話したり歌ったり、好きな時間を過ごせる。
島旅ヨット
弟のトーマスさんは漁師。毎週たくさんの 魚を釣り上げ、市場に卸す。冬は鯛が大漁!
案内人/鬼崎翔大 撮影/尾原深水 編集/中野桜子