〝密かな楽園〟瀬戸田に移り住み感じた「豊かさ」
広島でサスティナブルな暮らしに浸る。
世界を魅了する 密かな楽園瀬戸内アイランド
瀬戸田は、広島県尾道市の最南端、瀬戸内海に浮かぶ生口島の町。島内はレモンの花の甘い香りに包まれ、穏やかな海に囲まれたのどかな場所。瀬戸内ならではの海や気候によって、安全で平和なアイランドとして海外から も注目を集め始めており、2019年の米国「The New York Times」では「52 Places to Go in 2019」で瀬戸内アイランドが日本で唯一選出されたほど。日本一の国産レモンの生産地としても有名で、全国各地のスーパーやレストラン、料理人から重宝され、通称「レモンの島」と呼ばれるほど生活にレモンが根付いている。近年この島に移り住み、島づくりに尽力しているシェフ、鬼崎翔大の目に映る瀬戸田の魅力を見せてもらった。
港の“泊まれるレストラン” SOIL
ここはサイクリストたちの楽園ともいえるしまなみ海道〟近くの島。
ぶらりと休憩ができたり、一晩疲れを癒したり、おもいおもいの心地よさを提供できる場を作りたい。
僕がソイルを通して瀬戸田でできること
よく、「なんで東京の第一線にいてこっちに来たの?」と言われることがあります。たしかにシェフとして海外や東京で色々な経験をして、まだまだ東京でやりたいとも思いました。でも、生産者との距離が近いところへ行きたいと思ったし、地方がこれから強くなるべきだと思った。1年前にアメリカのフードホールの立ち上げから帰国したタイミングで、食材との距離が近い場所に行こうとしていて、そんなとき呼ばれたのが瀬戸田でした。生産者さんの「この食材でこういうことできないかな?」という声は東京にいては聞こえなかったんです。食材との距離が近いということは地方の強み。食材たちを日々どう落とし込むかに向き合うことは、料理人としての使命を感じますね。ソイルは、生産者が都会と繋がり活躍できる場所になれれば嬉しいです。都会と島を繋ぐ町づくりをしたいです。
島食材×薪料理
朝はカフェ、昼はランチメ ニュー、そしてディナーは島食材をふんだんに使用した薪料理。鬼崎シェフの原点である中国料理の技法を用いた、ここでしか食べられないコース仕立てとなっている。この日の料理は島野菜の薪グリル、島ダコの麻婆豆腐、地魚の薪焼き、鶏の薪焼き、その他。その日にとれた魚・ 野菜や仕留めたての肉料理が楽しめる。器は惠谷氏に特注で作ってもらっているこだわりのもの。
空間的な贅沢さを追求した 新しいホステル
僕は料理人であり、観光大使をやりながら地域活性プロデューサーの役割もやらせてもらっています。これまでレストランに尽力してきたんですが、宿泊施設やカフェ、交流の場を提供するサービスを統括して、色々なことに気づかされました。朝食からランチ、 ディナーと営業する大変さはありますが、老若男女、世界各国から旅をしに来る人との一期一会の出逢いがあり、やりがいのほうが上回ります。
ソイルは全面ガラス張りのレストランで、客室にも海が見える大きな窓を備えています。逆にいえばそれ以外はシンプルで素朴な素材でできていて、余計な装飾がない。それが最高の贅沢だと感じさせてくれるのが瀬戸田ならでは。朝日と夕日を目一杯浴びることができ、都会では味わえない時の流れを感じながら人々とのおしゃべりを楽しんだり、島食材のおいしさを味わえる。ここに来て、島の人の優しさや、食材のおいしさ、様々な〝豊かさ〞を感じることができたので、それをお客様にもシェアできれば嬉しいです。多島美の美しさというものを肌で感じると、言葉にならないほど感動するはず。
休憩時間に畑や海に行き、新しいコミュニティができる。そうするとさらにアイディアが生まれ、ものづくり、改革ができる。ゆくゆくは全国にソイルを増やし、料理人やスタッフが店舗間を移動しながら四季を感じ出逢いや食材に触れることができる環境づくりをしていくことが、今後の展望です。 (鬼崎さん)
ドアを開けるとあっと驚く絶景独り占めの部屋! 朝・夕刻と、目の前に広がる海と太陽の表情を楽しめる。リーズナブルに宿泊したい人はドミトリータイプの客室がおすすめ。
SOIL SETODA
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田 254-2
TEL 0845-25-6511
ディナーのみのご予約も可。※営業時間や定休日は、 SNSにて随時更新しておりますのでご確認ください。
Instagram @minatoya_setoda
案内人 鬼崎翔大
おにざき・しょうだい
1986年生まれ、熊本県出身。熊本桃花源にて四川料理を学び、世界を転々としながら様々な飲食媒体の立ち上げに関わる。帰国後、六本木虎峰、西麻布浮雲を経て渡米。現在は広島の生口島に移住しMINATOYA(ソイル内レストラン)のシェフとして腕をふるう。
Instagram @zakioni
案内人/鬼崎翔大 撮影/尾原深水 編集/中野桜子