知られざる星空の美しさ 北海道の離島・礼文島で日帰りをおすすめしない理由
日本最北の離島、礼文島。「花の浮島」とも呼ばれる島には、高峰にしか咲かない高山植物が約300種も咲き誇る。そして、夜には空を埋め尽くすほどの星々が人知れず輝く。
大地と星空による礼文島だけの共演
礼文島の星空が異様に美しいことを知る人は少ない。観光客の多くは島の高山植物を愛でた後、日帰りで帰ってしまうからだ。夜空に天の川が浮かび上がる頃には、寂しさにも似た静けさが島に漂う。
この美しい星々の存在を「知る人ぞ知る」程度に留めておくべきか。都会では天の川を見たことのない子どもが大勢いるというのに。それにしても星が近い。そもそも星空の見える条件とは何だろう。答えは単純で、空と大地が暗いこと。街明かりや街灯が少ないほど、星は輝きを取り戻していく。
礼文島の観光名所「桃台猫台展望台」から眺める桃岩のシルエットと星空。この場所も夜になれば星空が浮かび上がる星景ポイントの一つ。島全域でこうした星空が眺められる。
島には南北をつなげる約20kmの道路がある。途中、スーパーがある町は2ヶ所だけ。主要な道から外れてしまえば、街灯のない真っ暗な道に入ることができる。とりわけ美しいと感じられるのは桃岩展望台、桃台猫台展望台、久種湖畔、スコトン集落など。島には星空鑑賞に適した場所はいくらでもある。
約300種の高山植物が咲き誇る礼文島は「花の浮島」と呼ばれてきた。花が咲いていたから開発を免れたのか、大規模な開発とは無縁だったから花が咲いているのか。どちらが先かはわからないが、花を愛する心に星が近づいてきたのだと思うのはロマンチックに過ぎるだろうか。
柏倉 陽介 | かしわくら ようすけ
ネイチャーフォトグラファーとしてスミソニアン自然史博物館、国連気候変動枠組条約締約国会議などで作品を展示。ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテストやワイルドライフフォトグラファー・オブザイヤーなどに入賞、国際モノクローム写真賞では審査員を務める。今年3月に写真集「Back to the Wild 森を失ったオランウータン」を上梓。
写真・文 柏倉陽介
ドローンパイロット 深田康介
編集 二村勉史
<礼文島への翼>
礼文島へは東京(羽田)などからANA便で稚内空港へ。稚内空港からバスで約40分の稚内港フェリーターミナルからフェリーで香深港まで、約1時間55分。