薩摩でいただく現代フレンチ 重富島津家の別邸で感じる百有余年の記憶
百有余年の記憶に現代の美を添える 重富島津家別邸が語る武家の風格

「殿の間」から中庭を眺める。しんと澄んだ空気の流れる屋敷の磨りガラスの外に、晴れ渡る空と桜島、丁寧に手入れされた中庭が眩(まぶ)しい。
ここ「マナーハウス島津重富荘(しげとみそう)」は、かつて薩摩藩主の分家“重富島津家”として島津久光を世に送り出し、その後久光の三男珍彦(うずひこ)が住んでいた邸宅だったという。その歴史は170年にも及び、江戸時代特有の武家屋敷造りの重厚な佇まいがそれを物語る。


趣のある建築の廊下。ベンガラ色の壁は当時は魔除け・虫除けの効果があるとして琉球豚の血を使って着色していた。ふすまの引き手には貴重な薩摩焼の白薩摩が使用されている。当時白薩摩は島津家しか所持できないものとされていたそう。
圧倒される建築、調度品やアートの数々に触れ、当時の華麗なる島津家の様子を瞼(まぶた)の裏に妄想したりしているうち、美しい一皿の料理が運ばれてくる。それは洗練されたフランス料理。料理長の宮元伸一郎氏は鹿児島県産と旬にこだわった食材を厳選し、食材それぞれの魅力を最大に引き出す調理法の探究に余念がない。別邸で初めて出会う料理の一口一口を食する時間には、タイムスリップして過去と未来を一気に味わったような贅沢さがある。


マナーハウス島津重富荘(旧重富島津家別邸)フレンチレストランオトヌ
撮影 神林環
取材・文・編集 中野桜子
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