上白石萌歌がメキシコへ15年ぶりの“里帰り” 表現の原点と色の感性を辿って
才人が旅先で出会った忘れえぬ光景を綴る。今回は演技に、歌にと多彩な才能を発揮しているアーティスト。

写真・案内人 上白石 萌歌
鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて当時史上最年少の10歳でグランプリを受賞。‘12年にドラマ「分身」で俳優デビュー以降、数々の映画、舞台、ドラマに出演。‘19年に、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。またadiue名義で音楽活動も。4月からスタートするTBS金曜ドラマ「イグナイト-法の無法者-」では初の弁護士役に挑戦。4月25日公開の映画『パリピ孔明THE MOVIE』ではドラマに引き続き、ヒロイン・英子を演じる。

私は父の仕事の関係で、小学生時代の3年間をメキシコで過ごしました。今回、ご紹介する写真は昨年、テレビ番組のロケで15年ぶりに“里帰り”させてもらったときに撮影したものです。
懐かしい景色をフィルムに収めながら、私は以前、友人から聞いた「人の色彩感覚は、幼少期に目にしたもので決まる」という言葉を思い出していました。
写真の撮影地はメキシコシティ郊外の町・ソチミルコです。町のシンボルは運河と、そこを往きかうカラフルな小舟「トラヒネラ」。
貸し切りにした舟の上でパーティをしていると、並走する舟のマリアッチが、音楽で花を添えてくれる――。そんな、素敵な文化が根付いている町です。幼いころの私も、父母や姉とこの町を訪ね、トラヒネラでマリアッチの演奏を楽しみました。家族団欒の思い出を噛み締めながらシャッターを切ったのが、この写真です。

私はファインダーを覗きながら、しみじみと思いました。「メキシコは色彩の国だな」と。トラヒネラの派手な色使いはもちろん、壁画やアートが町には数多くあって、美術館に行かなくても、たくさんの色を感じることができる。さらに言えば、いろんな肌の色をした、さまざまな価値観を持った人たちが暮らしていて、地域によっては貧富の差も激しく、かつて私が住んでいたときも、同年代の子どもたちが路上で生活をしていたり……。たしかな多様性が存在する色とりどりの国、それがメキシコだと、私は思います。

そしていま、表現することを仕事にできた私の色彩感覚や想像力、その礎を築いてくれたのがこの国なんだと、私はこの旅で強く思ったのです。
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