古事記の神話が息づく島根へ ヤマタノオロチゆかりのスポット・名物店
造形作家の森井ユカさんが島根県へ。古事記に登場する「ヤマタノオロチ」の舞台・雲南市のゆかりの地をはじめ、伝説に因んだ地酒「やまたのおろち」の酒蔵や、出雲の絶品海鮮グルメを巡る魅力たっぷりの旅をお届けします。
数千もの伝承の中から、都道府県ごとに一匹の妖怪を選び、造形作家森井ユカの独自の解釈で創造しました。妖怪に誘われるがまま旅すると、美味しいもの、きれいな景色に必ず出会える!? ようこそ、空飛ぶ百鬼夜行へ。
島根県ヤマタノオロチ
八つの頭と尾。人喰う巨大な妖怪は、その名もヤマタノオロチ

八つの頭と八つの尾を持つ。谷を八つ、尾根を八つ渡るほど大きく、体には苔(こけ)や樹木が生えている。その眼(め)は赤く、腹には血が滲(にじ)む。島根県を流れる斐伊川の化身だともいわれている。
オロチが生きる雲南市は1300年にわたる神話の世界

奈良時代に完成した神話「古事記」に記されたやまたのおろちの物語とその姿は、現代日本の漫画、映画、ゲームなど様々な媒体に関わるクリエイターたちに今も多大な影響を与え続けている。
実際に八つの頭に八つの尾を持つ大蛇の造形をしていると、えもいえぬ畏敬(いけい)の念が湧き上がり、心が高揚する。目の前で動き出すのではないかとさえ感じてしまう。これはある意味「今も生きている」ということではないだろうか。
天が淵
アシナヅチとテナヅチの8人の娘を、毎年一人ずつ食べに来ていたヤマタノオロチ。8年目にスサノオが退治に乗り出し、オロチに強い酒を飲ませ弱ったところで首を切った。オロチからは後に三種の神器のひとつといわれる剣がこぼれ出て、これをスサノオは姉のアマテラスに贈り、残されたクシナダヒメを妻に迎える。
実際は地域の地理や産業の話も織り込まれながら伝承されている。雲南(うんなん)市の斐伊川(ひいかわ)周辺に散らばる、オロチにまつわる名所を訪ねるうちに、この土地が大切にしていることや伝えていきたいことが、じんわりと染みてくる。

八本杉
酒と海鮮と猪鍋に昇天オロチを追う島根の旅

酒を飲まされ最後を迎えたという伝説に基づいた地酒「やまたのおろち」に惹かれ、蔵元の「李白(りはく)酒造」へ。島根県産の五百万石が原料米の、オロチの持つ力強さをイメージした特別純米・辛口で、40年近い歴史を持つそうだ。ここでは常時10種類以上を試飲の上、買うことができる。



タイミングがよければ、販売所の店頭で会えるかもしれない現社長・田中裕一郎氏。軽妙な日本酒語りに、思わず引き込まれる。
李白酒造
https://rihaku.co.jp/
日本海の海の幸を訪ねたく、李白酒造から海沿いを西に、日本一高い石造りの白亜の灯台「出雲日御碕(いずもひのみさき)灯台」を目指す。するとイカを焼くいい香りが……。「お食事処柿谷(かきたに)」は開業して60年ほど。山陰の海の幸と、赤いお重の出雲そばが気軽に楽しめる。



お食事処 柿谷
0853-54-5106
島根の最後は、雲州平田へ。百年以上の歴史を持つ「料理以久満(いくま)」で鮎、うなぎ、そして猪を堪能する。猪の鍋は、しばし会話が止まるほどのとびきり濃厚な味わい。〆のそばにこの汁がよく馴染む。

平田では以前、オロチを退治する大きなスサノオの巨大な造形を見に来たことがある。雲南から平田までの道中には、ヤマタノオロチの名を冠した道の駅や個人の商店も多く、見つけるのはなんとも楽しかった。オロチの物語は、島根県の各地に息づいている。




料理 以久満
参考
『島根県雲南市観光協会』 www.unnan-kankou.jp/trip/trip-type/orochi/
「ニッポン47妖怪さんぽ」が2025年度グッドデザイン賞を受賞いたしました!

森井 ユカ
撮影 原ヒデトシ
編集 中野桜子
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