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神話の妖怪!海の守護神「七本鮫」とめぐる、祭りとグルメ『三重/七本鮫』

神話の妖怪!海の守護神「七本鮫」とめぐる、祭りとグルメ『三重/七本鮫』

ENTERTAINMENT 三重県

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ニッポン全国津々浦々、数千もの伝承があるとされる中から都道府県ごとに一匹の妖怪を選び、独自の解釈で造形しました。

妖怪に誘われるがまま旅にでかける空飛ぶ百鬼夜行に、ようこそ。

七本鮫

海の守護神で竜宮の使いである7匹の鮫が、旧暦の6月に海から川を遡り伊雑宮へ参拝に来るという伝説。後に一匹が死に、六匹に。この時期の海水浴や、あま海女の漁は控えられる。

ご利益:海上安全

1000年の時を超える 究極の妖怪さんぽへ

妖怪を造形し、伝承の地へ連れていく妖怪さんぽ。今回は日本の神話から生まれた、最も長い歴史を背負った妖怪の一つだ。

古くは古事記と日本書紀に記述のある七本の鮫は、竜宮の使いともいわれ、旧暦6月24日に海底から的矢湾(まとやわん)を通り、伊勢神宮の別宮である伊雑宮(いざわのみや)に参拝にやってくる。人間に一匹殺され六本になった鮫たちの怒りに触れぬよう、地域ではこの時期、海水浴や海女の漁を控えることが習わしだ。

旅の目的地は鮫たちが目指す志摩市の伊雑宮。毎年その6月24日に行われる「伊雑宮御田植祭(いざわのみやおたうえまつり)」では山海の豊饒が祈念される。初見は1289年の「伊雑宮年中行事並遷宮記」にあり、現在の形式になったのは鎌倉時代初め頃、今や国の重要無形民俗文化財に指定されている。祭りのメインは田植え唄に合わせ厳かに苗が植えられる、まことに雅な「御田植の神事」(写真下)。それとは対照的な「竹取の神事」(写真右)では半裸の男性たちが泥しぶきを上げつつ竹を奪い合う。なんとも見応えのあるこの肉弾戦、単なるぶつかり合いではなく、これによって田んぼが良い具合に耕されるのだ。竹は後に泥を落とされ、小分けして近隣の人々に配られる。

七本鮫には乙姫説もあるため、羽衣に足もつけて造形してみた。一緒に神話の世界を辿ろう。

伊雑宮御田植祭(通称:御神田)のプログラムの中でも、最も注目を集める「竹取の神事」。9地区が7つの当番に分かれ、年替わりで順々に担当するため気合が入る。

七本鮫に案内される神話をめぐる味の旅

七本鮫が参拝に訪れるという伊雑宮(いざわのみや)は近鉄上之郷駅より徒歩、あるいは伊勢市駅から車で30分ほど。鬱蒼とした樹木に守られた静かな神社だ。この伊雑宮から南に3kmほどの「竹内餅店」には前ページの竹取の神事に使われる竹竿を見立てた「さわ餅」がある。岡山からやってきて68年、現在は三代目が伝統の味を守る。ボリュームある柔らかな餅に、過不足ないこしあん餡、そしてほんのり感じる塩加減が絶妙だ。

竹内餅店の「さわ餅」。御田植祭の間はひっきりなしに客が訪れる。緑のほうはヨモギで風味づけされており、より竹竿を思わせる。

伊雑宮の創立は約2000年前、第11代垂仁天皇の御代。志摩を巡行中のやまとひめのみこと倭姫命が稲をくわ咥えて鳴く真名鶴に出会い、清酒を作った。

そして伊雑宮へ向かう七本鮫が集結したという的矢湾(まとやわん)へ。三重県が世界に誇るブランドとして誉れ高い的矢牡蠣を「的矢テラス」で。ここは約100年の歴史を積んだ佐藤養殖場が2022年に開店した、見晴らしのいい海上レストラン。牡蠣は水揚げ後1時間以内に供され、通年さまざまな食べ方で楽しめる。牡蠣独特の臭みは全くなく、その分甘みが感じられ、ぷるっとした身としっかりした貝柱とのコントラストにうな唸る。大阪のカタシモワイナリーと開発した、牡蠣殻を肥料に使ったブドウの白ワインが的矢牡蠣に合うことこの上ない。

見たこともないほどの大きな岩牡蠣は8月初旬まで。うまみと食感がたまらないおいしさの的矢牡蠣は一年中!ワインは牡蠣殻を肥料に育った大阪デラウェアの「KING SELBY」。海上に浮かぶ席で獲れたてを楽しむことができる。

的矢かきテラス

三重県志摩市磯部町的矢889

TEL:0599-57-2612

https://seijyoumatoyakaki.com/matoyakakiterrace/

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伊雑宮とともに伊勢神宮に参拝したら、歴史ある蔵が建ち並ぶ河崎の「中谷武司協会」で、神様へ捧げる食事「御神饌(ごしんせん)」にちなんだ「サトナカクッキー」を土産に。御神饌の基本メニューである水・塩・米・酒を地元の素材で揃え作られた、シンプルかつ深い味わい。包むのは伊勢和紙というこだわりようだ。七本鮫が伝え続ける果てしない神話を振り返りつつ、どれもじっくり味わいたい。

サトナカクッキー。そしてさりげなくしつら設えられた神棚。センスあふれる雑貨やアートのある中谷武司協会の店内。

中谷武司協会

〒516-0009 三重県伊勢市河崎2丁目4-4

TEL:0596-22-7600

https://satonaka.shop/

GoogleMap

森井ユカ

森井ユカ:立体造形家/キャラクターデザイナー ポケモンカードゲームのイラストレーション、 小麦粘土セット『ねん Do!』のディレクションなどを担当。著書多数。

出典:『コロナ禍の伊雑宮の御田植祭』大形直樹/『磯部町史 下巻』(磯部町史編纂委員会) /『伊雑宮の御田植祭』古典と民俗学の会(白帝社)/『磯部のむかしばなし』(磯部町教 育委員会)/『伊勢・志摩の民話』倉田正邦(未來社)/『すばらしき〝みえ〟』平成26年4月号(百五銀行)/『神路川』磯部小史/
伊勢神宮公式サイト

協力:伊勢志摩観光コンベンション機構/志摩市文化財調査委員会

取材・文・造形 森井ユカ

撮影 原ヒデトシ

編集 中野桜子

  • 素心の宿 大石屋

    二見浦夫婦岩前の和風宿、2022年リニューアル。館内は総畳敷き廊下となっています。展望大浴場、露天風呂、貸切風呂などを備え、全室禁煙・バリアフリールーム、など高齢者や女性に優しい施設となっています。
    TEL : 0596-43-2074
    詳しくはこちら

  • いにしえの宿 伊久(共立リゾート)

    伊勢神宮の内宮まで徒歩15分。伊勢の伝統文化がそこかしこに息づくお宿です。全客室露天風呂があり、2つの湯処と4つの貸切湯(無料)は、一日通して湯めぐりをお愉しみいただけます。夕食のメイン料理に伊勢海老、又は松阪牛をお選び頂けるなど、伊勢ならではの食材をお愉しみいただけます。
    TEL : 0596-20-3777
    詳しくはこちら

  • 志摩観光ホテル ザ クラシック

    的矢湾に面した高台に建つホテルからは目の前に的矢湾大橋を眺める事ができ、季節の食材を使った料理や、身も心もときほぐしてくれる露天温泉など上質のひとときをお過ごしいただけます。
    TEL : 0599-43-1211
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  • 伊勢志摩国立公園 賢島の宿みち潮

    伊勢志摩国立公園内、静かな賢島。全客室英虞湾を見晴らす絶景オーシャンビュー。季節を楽しむ和風会席をお部屋食でゆっくりと。人工ラジウム温泉大浴場でこころほどけるひとときを。
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