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マイルを軸とした「ANA経済圏」の構築、 拡大に取り組む「ANA X」の取り組み〜翼の流儀

マイルを軸とした「ANA経済圏」の構築、 拡大に取り組む「ANA X」の取り組み〜翼の流儀

ANA REPORT 翼の流儀

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マイルはさまざまな形で貯めることができるようになり、使える場所も増えている。そのマイルを中心とした日常での接点をつくっているのがANA Xだ。今回はANA Xで「非航空事業」に取り組む社員に話を聞いた。

「マイルでお客様と“日常の関係”を結んでいきたい」

「いかに、社会から必要とされるか。それが、会社という組織が存続できる条件なのだと思います。そこで、私たちANAグループとお客様を結びつけている“航空”は非日常だと考えたときに、“日常の関係”とはなんだろうかと考えました。その答えがマイルだろうと、思い至ったわけです」

ANA Xの経営戦略部・経営企画チームに籍を置く田中章裕(あきひろ)は、こう語ると小さく頷いてみせた。ANAグループの顧客マーケティングを担うANA Xは、ANAの顧客ニーズを起点に、顧客とも共創しながら新たな価値創造を目指すプラットフォーム事業会社。そして、同社がいま注力しているのが、マイルを軸とした“ANA経済圏”の構築、拡大だ。

「現在150店舗に達したANA Mall。お買い物をしていただくことで、マイルが貯まり、マイルで支払いをすることもできます」(田中)

1993年、当初は国際線だけでスタートしたANAのマイレージサービス。1997年には「ANAマイレージクラブ」を発足し国内線、国際線共通のサービスを開始した。空の旅で貯めたマイルを特典航空券に交換している読者も、少なくないはずだ。

だが、ここで田中は「しかし」と前置きし、次のように言葉を継いだ。「それだけでは多くのお客様とANAの関係は“非日常”のままなのでは、と思ったんです」

そして田中は、こう続ける。「それを痛感したのが、コロナでした。もちろん、私たちANAグループの屋台骨は航空事業。お客様は移動のためにANAを必要としてくださり、飛行機の移動で貯まるマイルが、航空移動に付随して提供できる価値だと捉えています。ところが、パンデミックにより、世界的に移動が制限されてしまい、ANAが皆様に提供できる価値そのものが、急減してしまいました。そこで、航空事業以外でも、日常的に価値をお届けできるようにしなければ、そう気づかされたのです」

そのような経緯から誕生したのが、顧客が日常のなかでマイルを貯め、マイルを使うことができるさまざまなサービスだ。

日常生活のなかで、どうすればこれまで以上に、社会とANAの接点を拡(ひろ)げていけるのか。今回はその一点を見据え、奮闘を続けるANA Xの社員たちに聞いた、ANA経済圏の築き方──。

ANA PocketやANA Mallを相次いでリリース

「各サービスがつながりあい、お客様の旅や移動がよりわくわくしたものになるよう事業を展開していきたいです」(岡田)

2021年12月、サービスを開始した「ANA Pocket」。スマホにアプリをインストールすれば利用可能で飛行機はもちろん、徒歩、電車、自転車、自動車などすべての移動でポイントが貯まる。貯まったポイントをもとに、マイルやクーポンが当たるガチャを回すことも。

田中と同じく経営戦略部・経営企画チームに所属する岡田咲季(さき)はこう話す。

「アプリをローンチ後、多くのお客様にご利用いただき、昨年8月には会員数200万人を突破しました。しかし、リリース当初は不具合も散見され『移動ログが正しく反映されない』『反映までに時間がかかる』といったお声をいただきご迷惑をおかけしたこともありました。先日、出張先の沖縄で、那覇空港からゆいレールを利用した際、ANA Pocket のアプリのお話をされている方がいらっしゃいました。『うん、ちゃんと(移動ログが)ついてる』とその方がおっしゃっていて。そのような場面を目の当たりにすると『私たちの仕事が、お客様に届いてるんだ、ご利用いただけているんだ』と思え、なんだかとても嬉しくなりました」

サービス同士のつながりについても、岡田はこう語る。「ANAはホノルルにA380を運航していますが、お客様が現地でご飲食やお買い物をした際にマイルが貯まるようマイル提携店舗の拡大に取り組んでいます。それにあわせ、ANA Pocketでも『ALOHA! Pocket キャンペーン』として一定条件ご利用いただいたお客様に現地マハロラウンジでグッズをお渡しする企画を行っています。各サービスが有機的につながり、お客様の旅や移動をよりわくわくしたものになるよう取り組んでいきたいです」

2023年1月には、ECモール「ANA Mall」を開設した。当初は出店数20ほどと、スモールスタート。だが、現場の人間たちが苦労を重ね、さらなる信頼を築いた結果、賑わいを増し、現在、150店舗を突破した。

特典航空券への交換に加えマイルが日常の支払いに利用可能に

「貯めたマイルの利用方法として最もお得感があるのが、特典航空券への交換だと思います。交換時期にもよりますが、1マイルが2〜3円以上の価値を持つと言われています。『タイミングよく利用すれば、これはかなりお得!』と喜ばれています」

さらに、マイルの使い先としてANA Payをリリースした。「ANA Payをご利用いただいているお客様からは『決済でマイルが貯まって嬉しい』『有効期限が切れそうなマイルを、コンビニの支払いなどで活用できてありがたかった』といったご評価を多数いただいています」

こう言って笑みをこぼしたのは、スマホ決済サービス「ANA Pay」を担当するANA X・ペイメント事業推進部の藤田愛奈(まな)。

「ANA Payでは特典航空券の入手には足りないマイルや有効期限切れになりそうなマイルを、カフェなどの支払いで1マイル1円相当で使えます」(藤田)

ANA Payのサービス開始はコロナ禍さなかの2020年12月。その後、大幅に改修を加え2023年5月、リニューアル版を再ローンチした。従来は、特定のクレジットカードからチャージした残高でのコード決済のみだったが、リニューアル後は、Visaのタッチ決済やiDなどの非接触決済にも対応。利用可能店舗は全国で200万以上だ。

また、Amazonなどオンラインストアでの支払いもできるなど、利用範囲は大幅に拡大した。マイルからのチャージも可能で、マイルを“貯める”だけでなく“使う”こともできるように。ANA PayからPASMOなど交通系へのチャージなどでもマイルが貯まるため、ポイ活愛好者からはANA Payの“お得感”も好評だ。

ANA Pay(上)とANA Pocket(下)、それぞれのホームページのトップ画面。ANAが近い将来の実現を目指す「マイルで生活できる世界」、そのゲートウェイとなる。

多様なデータと顧客と接した経験から“ANA経済圏”の拡大を目指す

経済圏のベースとなるのは、現在、およそ4千200万人もの会員数を誇るANAマイレージクラブだ。

今後について岡田はこう話す。「このような取り組みは、マイルの貯まりやすさ、マイルの使いやすさを追求するなかで生まれたサービスといえます。お客様一人ひとりに応じたご提案をするために何が必要か。我々のANAマイレージクラブを中心としたデータの収集・蓄積・分析に改善点があると思っています。点と点でサービスをお伝えするのではなく、データを基にお客様の生活や旅の理解を深め、新たなサービスの開発や提案を横断的に行うことで、よりマイルを貯めて使っていただけるのではないかと考えています。そのために、データ分析のスキルを培い、お客様を軸とした行動理解や分析をよりスピードを上げて取り組んでいくことが果たすべき仕事だと思っています」

スマホやパソコン、インターネットなど、彼らの“現場”はデジタルの世界ばかりのようだが、そうではない。田中は言う。「岡田も、藤田も、コールセンター等で直接、お客様と接した経験がありますし、私自身も飛行機を利用してくださるお客様と直(じか)に接したいと考え、入社4年目から4年間、羽田空港のフロントラインで仕事をさせてもらいました」

そのときの経験が財産になっている、と田中は続ける。「ある冬の夜、着陸した飛行機が大雪のため誘導路でストップしてしまったことがあったんです。機内でずっとお待ちのお客様のため、私たちはバスを用意して、吹雪のなかお迎えにあがりました。最後は深夜になってしまって。バスの車内でお詫びのアナウンスをしたんですが、凍えるような寒さのなか、震える声で話す私に向かって『ありがとう』と声をかけてくださる方もいて。まさか、お困りで大変な状況のなか、お礼を言ってもらえるなんて……。それは、本当に嬉しかったです。そして思ったのは、ビジネスというのはただ金品をやり取りするだけではなくて、やはり人と人、そのつながりや信頼関係が大切なんだということです。そういう関係を築きたいと思っているなかで言われた『ありがとう』に、本当に感動しました」

ANAが目指す「マイルで生活できる世界」。そこはきっと、血が通い、温もりも感じられる、そんな世界に違いない。