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チェジュ島に息づくお茶と蕎麦の物語 風と土が育む豊かな恵み

チェジュ島に息づくお茶と蕎麦の物語 風と土が育む豊かな恵み

TRAVEL 2026.10 韓国・済州島特集

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石、風、女性……
一杯のお茶の中に、この島の物語を込めること

見覚えのある光景が広がる。茶畑だ。チェジュ島での茶畑の歴史はまだ浅いが、お茶の木が育つための条件に恵まれているという。近隣の茶畑を経営する3名に出会った。「茶作りをして20年ほどになります。もともとチェジュ島の農業はみかん農家が主でした。でも、それだけでは厳しくなってきた頃、行政から緑茶を育ててみてはどうか、という提案があったんです。それをきっかけに、70〜80人の農家が集まり、力を合わせて立ち上げました」。

有機栽培を大切にし、人の手で行う作業も多い。「チェジュは昔から“石と風と女性が多い”と言われています。火山石があり、風があり、強い女性たちがいる。その環境で育ったお茶を通して、チェジュそのものを知ってもらいたい」。独自の茶の味は人々が協力し合って誕生し、島を支えている。

城邑(ソンウプ)緑茶村/성읍녹차마을

4772, Jungsangandong-ro, Pyoseon-myeon, Seogwipo-si, Jeju-do

近隣の経営者同士はライバルではなく、常に情報交換をして支え合う仲間。チェジュ全体の農業がうまくいかなくては意味がない。商品は韓国各地のカフェや店に届く。キム・メンチャンさんはテイスティングが楽しめるサロンも営む。案内してお茶を淹れてくれた。日本の茶農家さんともSNSを通じて親交があり、コラボイベントなども行っているという。

「チェジュの土で育ったお茶を、チェジュの土から作られた器で飲む。そうすることで、一杯のお茶の中に、この島の自然や文化まで感じてもらえると思うんです」と微笑む。

チャアム文化院/차암 문화원

254, Waseon-ro, Jocheon-eup, Jeju-si, Jeju-do
Instagram @jeju.chanong

北海道から運ばれた小さな集落の力強い蕎麦文化

山あい、標高約500メートルのこの村は、わずか21世帯の集落。ここで住民たちが、蕎麦(そば)の栽培から加工、商品づくり、飲食店運営までを手がける。その礎となったのが、日本の蕎麦文化だった。7年前、代表のカン・サンウクさんが向かったのは、北海道。現地で学び、日本との交流を重ねながら技術を身につけた。

興味深いのは、日本の蕎麦を再現しているのではないこと。韓国にも古くから、独自の蕎麦粉文化がある。そこで彼らは、学んだ技術を反映させ、この地の食文化と掛け合わせた。日本の知恵とチェジュの風土が出合い、独自の味が生まれた。しかしカンさんは言う。「大切なのは、ただ蕎麦を育てることではない。蕎麦を通してこの小さな村に人が訪れ、仕事が生まれ、地域が続いていく仕組みを作ることなのです」。

蕎麦畑と隣接して、カフェ、ショップ、レストランがある。蕎麦粉のジョン、冷たい麺、辛い和え麺、蕎麦茶やクッキーなど、ここでしか味わえないオリジナルの蕎麦料理へと発展させている。

名物のえごま油の和え蕎麦「チェジュ蕎麦ビビチャッチャッ麺」。ビジュアルも印象的で、チェジュ島をイメージして、ハンラサンの山を中央に、12の具材が盛り付けられている。
透き通っただしスープがあとをひく「チェジュ蕎麦水冷麺」や、旨辛ダレと和える蕎麦、蕎麦粉のジョン、マンドゥ(餃子)もおいしい。島内の蒸留酒業者と協力し、蕎麦焼酎も商品化している。

漢拏山アレチョッマウル本店/한라산아래첫마을영농조합법인

675, Sanroknam-ro, Andeok-myeon, Seogwipo-si, Jeju-do
Instagram @ftown1950


チェジュ島の中央に美しくそびえる漢拏山(ハンラサン)は、標高1,947mを誇る韓国の最高峰。ユネスコ世界自然遺産にも登録された豊かな生態系が息づき、山頂には神秘的な火口湖「白鹿潭(ペクロダム)」が広がる。

撮影 金子斗夢
コーディネート 城後美沙、前園亜耶
取材・文・編集 中野桜子