豊平川とアイヌ民族の関わりとは|100年ぶりに復活したサケ迎えの儀式「アシリチェプノミ」
和人が入植する遥か昔から、豊平川はアイヌ民族にとって生活を支える大切な「サケの川」でした。開拓史の陰で途絶えていたサケ迎えの儀式「アシリチェプノミ」は100年の時を経て復活し、今や各地の集落を繋ぐ重要な文化継承の場となっています。札幌ウポポ保存会会長の藤岡良子さんの取り組みを通じ、豊平川の豊かな恵みとアイヌ文化の歴史を紐解きます。
中流域—— 和人が来る前から行ってきたサケ迎えの儀式を復活させ、 毎年守り続けてきました

アシリチェプノミ実行委員会 副委員長 札幌ウポポ保存会 会長 種田シマンノ系14代 藤岡良子さん
豊平川に限らず、アイヌ民族は北海道の至るところで川でサケを獲りながら暮らしてきた。ところが、開拓使の入植後、川のサケを国が管理し、独占するために全河川でのサケ・マス漁が禁漁となる。それはアイヌの伝統を否定し、和人への同化を強いるものだった。しかし結局、都市化と水質汚染のせいで昭和28年に豊平川のサケは絶滅する。
アイヌにとって、サケは「カムイチェプ(神の魚)」。単なる食料ではない。そこで、途絶えていた儀式「アシリチェプノミ(新しい鮭を迎える儀式)」の復活を目指し、禁漁から100年後の昭和57年に実現させた。
「伝統文化の継承だけではなく、この儀式にはアイヌの復権という意味があります。そして、アイヌがアイヌであることを誇りにするための時間なのです」
川はアイヌにとって、アイデンティティを取り戻す場所だ。


「アシリチェプノミ」はサケの豊漁だけでなく、人々の安全、そして熊やキツネといった山の動物の分も祈る、いわばアイヌの世界観が支配する儀式。復活した昭和57年以来、毎年秋に行っている(今年は9月13日に開催)。祭壇にサケやイナウと呼ばれる祭具などを捧げて神に祈り、また、料理や果物を供えて先祖供養を行う。上の2枚は過去に行われた時の様子(提供/アシリチェプノミ実行委員会)。

「アシリチェプノミ」の復活と同じ頃、札幌では「カムバックサーモン」を叫ぶ市民運動が巻き起こり、昭和56年に豊平川にサケが戻ってきた。川近くの施設では、サケ科やさまざまな水生生物を展示すると同時に、豊平川生まれの野生サケを保全する札幌ワイルドサーモンプロジェクトに取り組む。

札幌市豊平川さけ科学館
https://salmon-museum.jp/ 入館料無料!
撮影 吉川麻子(cocoon photographs)
取材・文・編集 川原田朝雄
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