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豊平川下流 日本初のタマネギ栽培地・札幌|水害を乗り越え伝統「札幌黄」を継ぐ

豊平川下流 日本初のタマネギ栽培地・札幌|水害を乗り越え伝統「札幌黄」を継ぐ

TRAVEL 2026.09 北海道・豊平川特集

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明治時代に日本で初めてタマネギ栽培が始まった札幌。その伝統品種である「札幌黄」を守り続けているのが、豊平川下流域に位置する湯浅農園です。昭和56年の大水害をはじめとする猛威を乗り越え、河川改修とともに歩んできた農家の歴史と、幻のタマネギと呼ばれる「札幌黄」にかける情熱を紐解きます。

下流域—— 先祖たちが日本で初めて栽培したタマネギは僕らが作っていかないと無くなっちゃう

伝統品種「札幌黄」の栽培農家 湯浅農園 湯浅富夫さん

先祖は明治23年に開拓民としてこの地に入植した。富夫さんは建設会社勤務を経て、17年前に農家を継ぎ、現在は妻と2人だけで5ha弱のタマネギ畑を手がける。「子どもの頃、昭和56年の8月には『五六水害』と呼ばれる豊平川水系の氾濫があり、収穫間際のタマネギがすべて流されてしまいました」。それを機に大規模な河川改修が行われ、畑の環境も整えられたという。

日本でのタマネギ栽培は明治4年に札幌で始まった。馴染みのない野菜だけに、初めは内地に出荷しても散々だったという。だが、少しずつ消費量は増え、海外にも輸出されるようになった。その中で安定した収量を確保すべく、病気に強く、形が揃っていて、保存性の高いものへと品種が改良されていく。

だが、この農園では、あえてルーツに立ち返り、最初に栽培された品種「札幌黄(さっぽろき)」にこだわる。在来種なので農協や種苗業者では扱っていない。つまり出荷用のタマネギと同時に、タネを自家採取するためのタマネギを別に作らなければならない。それだけでも大変なのだが、原種に近い「札幌黄」は本当に厄介だ。個体差が激しくて発芽が揃わず、病害にも弱い。

現在、1ha以上の規模でこの品種を栽培している農家は数軒だけで、市内での流通量も全タマネギのうち3%にすぎない。猛暑や干ばつの影響で、去年は数軒が引退を決意した。それでも「札幌黄」を作り続けるのはなぜか。

「肉厚で柔らかくて圧倒的な味の良さがあるんです。直売所で『やっぱりすごく美味しいよね!』といった声を聞くと嬉しいし、やんなきゃならない。先祖から受け継いだこのタマネギを次世代に繋がなくちゃね(笑)」

豊平川下流域にあたる農園の土壌は、川が運んできた堆積物によって作られてきた。表層は砂質で水はけが良いので写真のようにひび割れて見えるが、下層部は粘土質で保水力がある。これが絶妙のバランス。

一方、ハウスではタネの自家採取のための栽培をしている。ポンポンと花を咲かせる“タマネギ坊主”がかわいい。

「札幌黄」の収穫は9月後半から。大手の流通には対応できず、直売所や生協での販売が中心。しかも普通のタマネギと違って日持ちしない。その代わり、味が濃くて肉厚で柔らかく、加熱するとぐっと甘くなる。

撮影 吉川麻子(cocoon photographs) 
取材・文・編集 川原田朝雄

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